なんだったんだよ。
「乗り物は反則だろうが!」
颯爽と走り去って行った車に中指を立てる。あいつらオレのダチをぶっ飛ばして踏みつけやがった。無茶苦茶すぎるし、
ぜってぇ許せねえ。
ルールブック上は反則じゃあなかろうとも、だ。
だが、今すぐにやり返して勝てるような武器を持っていない。向かっていった方角と、車のナンバーは覚えておく。お前らも覚えとけよ。
「クソゲーかよ」
「ああ、まったくだ」
「追いかけようぜ。地の果てまで」
オレの提案に、残り二人が頷いてくれた。バイクに、サイドカーをつけられたものが目と鼻の先にある。運転手と、その後ろに乗るやつと、サイドカー。これで三人乗れるし、サイドカーに乗っているやつは移動中に敵を見つけて撃つことだってできる。
「……ありゃなんだ?」
「なんだって、バイクだろ」
「いや、バイクはわかるんだけどよ。あれだよあれ」
ロンドが人差し指をプルプルさせながら、
タヌキのバケモンはその前足を地面から離して、後ろ足で立ち上がる。立った。タヌキが立った。
「なんだコイツ!」
「おい、やめろ!」
オレはルイの制止を振り切って、MP5のトリガーを引いた。銃口はタヌキのバケモンに向けている。さっきの轢き逃げからオレたちは学ばないといけない。敵が近づく前に先手必勝だ。見える範囲の味方以外は敵。
勢いよく飛び出した銃弾がバケモンの肉体に突き刺さり、その傷口からは緑色の血がどろりと流れ出る。
フツーの生き物なら血は赤色のはずだろうよ。
「あびゃああああああああああああああああああああああああああ!」
タヌキが悲鳴のようなものを発して、その左前足は何箇所か出来上がった傷口のうちのひとつに触れる。
「びゃあああああ!」
緑色の血に触れて、タヌキはもう一度悲鳴をあげた。その傷を創ったオレのほうを見てはいない。傷が出来て、そこから血が出ていることへショックを受けているような、そんな反応だ。
「やり返しに行くんじゃなかったのかよ! よくわかんねえバケモノ撃ってる場合じゃないだろうが!」
タヌキのバケモノにさらに撃ち込もうとリロードしていたら、制止してきたルイがオレの肩をつかむ。
「こいつも敵だろ!」
「違う! 俺らが戦わなきゃならんのはバケモノじゃなくて他のチームの奴らだ!」
ルイの言うことには一理ある。ゲームじゃないんだから。バケモノを倒したところでいい武器が手に入るわけでも、バフがかかるわけでもない。経験値が入るわけでもなく、弾の無駄っちゃあ無駄だ。
「けどよお」
放っといたらやばい気がするんだ。少なくともコイツに背を向けて逃げ出してはいけない。オレのシックスセンスがそう囁いている。仇討ちするためには、方角的にもコイツから追いかけられるかもしれないリスクを背負わなくちゃならない。なんだかやばい気がしてならない。とすれば、実質〝逃げる〟のコマンドは封じられたようなものだ。……逃げられないのなら、立ち向かうしかなくないか。
「あ、あぁ……あああ……!」
オレとルイが言い争っていたら、ロンドがバシバシと肩を叩いてきた。ずいぶんと乱暴な肩叩きだ。
「なんだよ」
「目が! 目が!」
「メガ?」
緑色の血が出ていたはずの傷口に、
その目と、オレの目が合う。
「……!」
「いっしっし」
タヌキがせせら笑うような声を出した。二足歩行でえっちらおっちらとこちらへ近づいてくる。動けないオレを、ルイが「しっかりしろ!」と抱き上げて動かそうとした。足の裏が地面にくっついてしまったようにびくともしない。
「なんだよ! どうなってるんだよ!」
「あ、ぁあああ、ああああ」
「ロンドも動かすの手伝ってくれよ!」
「たしゅけて! たしゅけてええええ!」
両手両足で、四足歩行になってロンドは逃げ出す。オレも逃げ出したい。やだよこんな、こんなよくわからないタヌキのバケモンにやられんの! まだオレは何も、アンリの仇討ちすらできてない!
「うひゃひゃひゃっ」
見れば、MP 5によって創り出された傷のすべてに
「ゔぁ、あ、あああ」
「ひゃひゃひゃっ」
タヌキは口角を上げ、ニンマリとして――不思議と人間の表情のようにも見えた――ルイの身体を持ち上げると、腕を
なんなんだよこいつ……!
オレはどうすれば助か
「ひゃひゃっ」
【生存 76(+1)】【チーム 23】