舞台は世紀末華國の江湖。邪派として迫害されし秘密結社蠱道会のもとに、バリツの使い手である英國人スティーブ一行が訪れた。世の近代化の波は武林にも及んで門外不出の奥義は流出し、近代的格闘家による東洋達人狩りも散見していた。そして蠱道会もその標的に遭おうとしていたのだった。
スティーブらが強奪を図る蠱道秘籍とは、手にする者を陰極あるいは陽極へと導く奥義書であった。主人公スンが放った引誘蠱に引き寄せられたのは、幼少期の夢に現れていた運命の美青年・銀毛狼。
多彩な英傑が登場する番武侠譚。
・主要登場人物・
「スン」蠱道会に所属する蠱師。蠱術は未熟だが真面目な若者。
「リン」蠱術や武芸の習得に加えて古琴も奏でる文武両道の蠱道会の代表者。厳しさと優しさを兼ね備えた人望の厚い青年。
「中山あお」剣詩舞に京劇や西洋歌劇の要素を取り入れた劇団である女子聖剣詩舞社を創立した団長。また西山教の教祖でもあり、教団本部を劇団の稽古場にしている。
「リュウ道士」リンが一目置くほどに堅実な道士。中年に差し掛かってなお厳しい鍛錬を自らに課し続けている。堕落を忌み嫌うが時折り麻雀や京劇鑑賞は嗜むこともある。近代化の影響には眉を顰めることも多い。
「スティーブ」自らが運営するバリツ・クラブの代表にしてアヘン売買の元締め。拷問も躊躇わぬ強行派。自論を実践することについては厳しいため、支持する部外者も少なく無い。
「金剛砕」大和國の戦場武術団体である吸気会の分派、金剛流の開祖。裏で蔭間を運営する大和武芸界の鬼才。
「麻希」執事カフヱーの給仕。金剛砕に雇われていた元蔭間の和族。生い立ちこそ貧しいが、生まれ持った気品の高さから作法の習得に心血を注いでいる。その様子をスティーブに評価されて側近として扱われている。
・用語・
「蠱道秘籍」読む者の陰陽の気が高まる奥義書。陰の者は番の者を惹きつけ、妊娠や出産が可能な肉体と化す。また外骨格蠱の装甲を纏うことで防御力も向上する。陽の者は身体能力が飛躍的に上がり、番の気配を察知する能力も向上する。また爪や牙を伸ばすことが可能となる。
「江湖」非主流派社会、裏社会、芸道世界などの広い意味を持つ。
「軽功」練度により高所へ跳躍する者や、宙を飛行する達人まで様々な領域がある。その多くが武林の漢族であるが、少数民族や芸道世界にも熟達者が一握り存在する。