第七夜 一章 ENDING

 鹿児島県警も大きな刷新を行い落ち着き始めた。

 ただ林間合宿については今回で終わりではなく、今後は全ての都道府県警察で定期的に行うことになったのである。


 まだ他の都道府県警察にJNRの人間が潜んでいるかもしれないからである。


 桐谷世羅は内部組織犯罪対策課のフロアで息を吐き出して

「仕事増えてるじゃねぇか……面倒くせぇなぁ」

 とぼやいていた。

「短期間だと思ったから踏ん張ったのに」


 そう言いつつ、問題の20年前のなるみ礼二の事件の際に駐在員となった警察官たちの後追い調査の資料を見ているので、東大路将も天童翼も根津省吾も、また、菱谷由衣も苦く笑って

「「「「口だけ反抗課長」」」」

 と呟いていた。


 菱谷由衣は第三組織について知っていることを全て話してそこで集められた警察内部の不正や隠蔽の資料を提出した。その組織のメンバーについてもわかる範囲で報告をして、鬼竜院闘平と組織を取りまとめていた人物の話し合いが行われたのである。


「警察が不正や隠蔽に走れば組織はまた動く」


 そう言って警察に残りたい人間は組織から除外することにしたのである。菱谷由衣については彼女自身の意志で組織から抜けて警察の中で働くことを選んだのである。


 仮につけていたJNRという名称はそのままJNRとなった。但し『JINROU』ではなく『Jail Narumi Reiji』の略としたのである。正になるみ礼二の作り出した監獄と言う意味である。


 将は来年度の一斉林間合宿の計画書と警狼ゲームの方法の手順書などを作りながら隣に座る翼に

「一期が40名から60名だから6カ月の間に一か月ごと少ないところで3回、多いところで4回しようと思うんだけど」

 と告げた。


 翼は省吾が調書データベースから疑惑のある事故の調査書を印刷するのを受け取りながら

「そうだよな、だいたい9名から20名以下がベストだからな」

 と言い

「監視の利く人数はやっぱり最大10名前後だろうからな」

 と答えた。

「それで役割を前に変更するとか言ってたって省吾から聞いたけど」


 省吾は笑って

「占い師を追加するとか、狂人を追加するとか言ってただろ?」

 と告げた。


 将は考えながら

「そうそう、人数によってのパターンを考えてる。一か月ごとに全員をチェックでいいか」

 とパソコンのキーボードの上で指先を動かした。


 桐谷世羅が不意に

「よし」

 というと

「来年度の警狼ゲームまでには時間がある。それに俺たちの仕事は新しい芽だけではないからな」

 と告げると

「なるみ礼二が残した負の遺産を一つずつ潰していくぞ。先ずは新潟県警の管轄内にいる人物だ」

 と告げた。


 西日本の警察内部から負の遺産となる人物たちは消え去ったが他の地域についてはまだ予断を許さない状態なのだ。

 ましてや組織は消え去ってはいないのだ。そして、今なお自分たちの欲望を満たすために動いている可能性があるのだ。


 将は敬礼をすると

「はい!」

 と答えた。


 ……そのうちに六家の残りにも、そして、あの瀬田祥一朗にもぶち当たるはずだ……


 将はそう考えて桐谷世羅の元に仲間たちと足を踏み出したのである。


 東京の街は明るくいつもと変わりない光景が繰り広げられていたのである。