ユキナは毎日のように見舞いに来てくれるが、時々数ヶ月来ない時もあった。
その間に何をしているのかは話してはこないし、俺も聞く気はなかったから知らないままだった。
いや、正確に言えば知るのが怖かったのかもしれない。もし『今さっき他の世界のレイラフォードを殺してきたばかりだ』と言われたら、例え俺と関係なくても心を痛めてしまうかもしれない。
彼女は面会に来るたびに『
それについては俺自身も注意しているつもりだった。
もし俺が起こした行動で未来が変わってしまったら元も子もないし、何よりあの日のあの出来事を防ぐための対策が取れなくなってしまう。
俺は俺を含めたあの日の四人を救いたい、だから未来は変えたいがそこに至るまでの未来を不用意に変えるのは危険だ。
もし未来を変えるなら四人が出会ってから。
そこからならある程度未来が変わっても問題はないし、むしろ本当に未来が変えられるのか実験する必要すらあるだろう。
それについてはユキナも同意している様子だった。彼女自身も未来を変えるような行動はしないように努めているようだ。
あと、未来を変える手段として敵を説得することは出来ないのかと尋ねたこともあったが『不可能な上に個人的に絶対やりたくない』という強い意志を持った返事が返ってきた。
本当にユキナとの付き合い方は非常に難しい。
レイラフォードを殺して世界を周るという行動に賛同はできない。だが、少なくともこれまで受けた
だから、もし別の世界でレイラフォードと
◇ ◇ ◇
「少しは身体が動くようになってきたようね……」
入院して五年近くが経ったころ、リハビリテーション病院へ
「まだ時間に余裕があるわ……。それまでリハビリを受けてある程度運動できるようにしておきなさい……。来るべき日に――あなたの『恨み』を晴らすその日にあなた自身が動けなかったら元も子もないのだから……。ちゃんとその時まで付き合ってあげるわ……。こんな面白い世界を作ってくれたあなたへの私なりの礼よ……」
ユキナは
恐らく今でこそ
◇ ◇ ◇
入院をしてから八年が経ち、本来であれば二十五歳になるころ、俺の退院が決まった。
運命の期日まであと二年しかない。
やっとゆっくりなら一人で生活できる程度には回復してきたが、まだまだ不十分だ。
「私は幽霊だけどアナタは人間……これからも生きていくならしっかりと人間として生活できるようにしなさい……」
そう言うとユキナは、何もない俺に衣食住の環境を全て整えてくれた。
レイラフォードを殺すという点については未だに同意できないが、少なくとも俺を一人の人間と見てここまでしてくれる相手に不義理なことはできない。俺は明確にユキナについていこうと決めたのだった。