お互い時間が止まったように、視線をそらせなかった。いや、僕はそらしたくなかった。
彼女の隣にいるのがたとえ大事な人であるのだとしても、僕の想いは変わらない。
ゴウとかいう奴が、おい、と月見里さんの肩を叩くと、月見里さんは、はっとしたような顔をして何もなかったかのように歩き出してしまった。
「お待たせ、結城ちゃん、松岡?」
店から出て来た川辺主任が僕のただならぬ視線をゆっくり追うのが分かった。
「月見里?」
気付いた川辺主任が寝ている結城さんを支えると、早く行け、と促してくれた。
「ありがとうございます」
「おう、頑張れ! 俺は松岡を応援してる! まあダメだったら俺がまたヤケ酒付き合ってやるからな!」
「そうならないことを祈っててください」
「祈っててやるから行ってこい!」
「はい」
僕は駆け出した。暑いのも汗が出るのも構わずに、彼女を追い掛ける。
これだけは手放したくないと強く思うものと、向き合うために。