今日はひさびさに楽しい一日だった。
今日一日で何度見ただろう、あの月見里さんのぽかんと間抜けに口を開けている姿を。
「くくっ」
思い出しただけでも笑える。
「あーー、楽しっ!」
友梨がアメリカに行く寂しさを紛らわすにはちょうど良いおもちゃが手に入ったような感覚。
タイミング良く友梨からメッセージがきたのもナイスだった。
『今日はありがとう。今度は彼女を誘って、湊くんも一緒に四人でご飯食べようね』
そのメッセージを開き、忘れないうちに返信する。
「いつでもいいよ。彼女も楽しみにしてるって言ってたよ! っと。これでよし」
するとすぐに既読が付き、その後、間を置かずにメッセージが返ってくる。
『湊くんと相談するね!』
それに対して【了解】とスタンプを送っておく。
「だけど友梨、全然嫉妬してくれないんだな」
月見里さんを彼女だと紹介した時、友梨は嫉妬する所か逆に我が事のように喜んでくれていた。
「する訳ないか嫉妬なんて。友梨には湊くんしか見えてないんだろうな……」
はあ、と大きく溜め息を吐き、ベッドに仰向けに寝転がると目を閉じた。
浮かぶ友梨の笑顔。
それがだんだん間抜け顔の月見里さんへと変わっていき、ついつい、ぷっ、と笑ってしまった。
*
指定した駅で待ち合わせをして僕の家に向かう。家にはすでに友梨と湊くんが来ていて、買ってきたものをせっせと皿に盛り付けている事だろう。
「マカロンなんだけど、お姉さん好きかな?」
歩きながら月見里さんに聞かれるが、それ買った後で聞くんですか、とおかしくなる。
「友梨は甘いものなら何でも食べますよ」
「そっか、良かった。苦手な人もいるしさ、和菓子にしようか悩んだんだけどね……」
「聞いてくれたら良かったのに」
やっぱりおかしくて、くくっと笑いが漏れる。
「何がおかしいの?」
「だって僕彼氏なのに、頼ってもらえてないな〜と思ったら、何かおかしくて。月見里さんて甘えるの下手ですね?」
「はぁ〜!? って言うか彼氏でも彼女でもないし、付き合ってないでしょ!?」
「へ〜、そんな事言ってたら今から友梨と湊くんに疑われますよ。ちゃんと彼女役全うしてくださいね! そうだ、『松岡くん』なんて他人行儀に呼んだらダメですからね!」
「待って、……え、それって松岡くんも私を『月見里さん』って呼んだらダメなんじゃないの?」
そんなの当たり前でしょう、と声のトーンを低く落とす。
「
「!!!」
その顔、見たかったやつだ、と内心で楽しんでいた。
「ほら、今度は
いい気分のままに、からかってみるのだが、
……まさかこんなの不意打ちだ。
「
月見里さんから聞いたこともない
それに驚いた僕に向かって、つんと顎を上げる月見里さんは大人ぽくて少しだけ見惚れてしまっていた。
だからもう一度名前を呼ばれるなんて思ってもなくて、またもや不意打ちを喰らう。
「さ、行こっか。
からかうつもりが、まさかからかわれるなんて思いもしなかったんだ。