「あの……」
くだんの
「どうしたの?」
「ちょっと、聞いてもいいかな?」
「なんかあるのか?」
おそるおそるな
「その、わからないことがあまりにも多すぎて……
こんなことをこんな
それに、好奇心も少なからずある。
ウツロを囲む面々は押し黙っている。
「やはり、まずかったか?」とウツロは思ったが、そんな彼を察してか、
「そういえば確かに、具体的なことは何も話してなかったね。フェアーじゃないし、これからのことも考えて、話しておこうか」
「うん、頼むよ」
彼女の言い方にはいくらか「含み」があったけれど、ウツロは
「魔王桜とアルトラのことだね。いったい何の目的で、魔王桜がアルトラを『植えつける』のか、また何を基準に『植えつけられる者』が選ばれるのか……それはわからない。少なくとも
「『種』、か。魔王桜はいったい、何を考えているんだろうか……」
「『考えている』ってところがそもそも、違うのかもしれないよ? 何かしらの『条件』を満たす者の前に、機械的に現れている可能性だってある。魔王桜の正体自体が謎だしね。人間とは違う知的生命体なのか、その見た目のまんま妖怪なんてのもナンセンスだし、いずれにせよ、ファンタジーの世界だよね」
「
空気を読まないウツロの質問に、一同はギョッとした顔つきになった。
彼としても触れるべきかかなり迷ったのだけれど、毒食らわば皿までである。
「
「なんだか、
「まあ、柾樹」
「すまない、
不快感をあらわにした南柾樹を真田龍子がいさめたので、ウツロは少し
「それは、おいおいね。ただ、その時が来るまでは見せられない。君もいずれ、嫌でも知ることになるはずだけれど、アルトラっていうのはその人間の『精神の投影』なんだ。アルトラを見せるってことは、自分の心を外部にさらけ出すようなもの。
アルトラは「精神の投影」……
なるほど、「異能力」とはよくいったものだ。
それはきっと、強みであると同時に弱みでもあるのだろう。
まだまだ謎は多い。
だがこの場はこれ以上、彼らの
少し話題の方向性を変えてみよう。
「俺もなったということだけれど、そのアルトラ使いに。まだ全然わからないんだ。何かしらの不思議な能力が宿った、なんて感覚はないし」
同じ内容ではあるけれど、ベクトルの向きを変えるように、ウツロは質問の仕方を変化させてみた。
「最初はみんなそうだよ。何か
「龍子、しゃべりすぎだぜ。俺らはまだ、おまえのことを信用したわけじゃないんだからな、
はずみで答えた真田龍子を、南柾樹はすぐさま
その態度に、今度はウツロが不快になった。
「俺だってそうだ、『南柾樹』。やはり、むしずの走る男だ」
「ああ? もういっぺん、ドンパチやらかしてえのか?」
「おまえがその気ならな」
「はいはい、そこまで。ったく、なんで男ってこうケンカっぱやいんだろうね。何度も言うけれどウツロくん。ねじ伏せるのなんてわけない、でも私たちはそれをしていない。この意味を理解してほしいな」
いきり立った二人を、いったい何度目になるのか、星川雅が収めた。
どうにも相性の悪い彼らに、さすがの彼女もイライラしてきた。
「止めるな雅。こいつの減らず口を止めてやるんだ」
「貴様こそ、
「あらら、ウツロくん。本当にねじ伏せることになるよ?」
「みんな、落ち着いて!」
真田龍子が必死に場を収めようとするが、三人は意に介していない。
もうダメだ。
彼女がそう思ったとき――
ぶうううーっ!
一同はあ然として、彼のほうを見やった。
「す、すみません。
「くさ! 虎太郎! あんたのおなら、くさすぎ! せっかくのお料理がまずくなるでしょ!」
「ははは、何ともすみません」
苦笑いをしながら、真田虎太郎は後頭部をすりすりと
ウツロは気づいた。
虎太郎くんはわざと、この場を
なんという機転、判断力と行動力。
やはり、ただものではないぞ、この子は。
そして、真田さん。
彼女もワザと、弟をしかった。
なんというコンビネーション。
それはきっと、この
なんてことをしてしまったんだ俺は。
恥ずかしい……
「くせえ! 虎太郎! バカ、こっちによこすな!」
ひらひらと手を振って、真田虎太郎はにおいを散らそうとしたが、これでは拡散するだけである。
南柾樹は鼻を押さえながら、顔を
「虎太郎くん、あとでお薬をあげるから。ああ、もう」
星川雅も鼻から下に手を添えて隠した。
ウツロはまた気づいた。
虎太郎くんが作った流れに、みんなが
なんなんだ、これは?
おそらく、長い間一緒に暮らしているからだろうが、これが人間の絆の力なのか?
わからない、俺にはまだ……
「さあさあ、みなさん。おいしい料理が冷めてしまいます。いただきましょう、いただきましょう」
四人は何事もなかったかのように、食事を再開した。
ウツロは
(『第29話