両腕の隙間から前を覗くと⋯
― 七色に光る何かが立っていた
竜のような身体、蝶のような羽根。
その"謎の何か?"は、撃たれた"黒い閃光矢"を片手でいとも簡単に掴むと、
「アァァァ⋯ァァァァァア?」
その矢をなんと"自分の腕?"に装填し始めた。
そこからたった一撃を放っただけで、なんとアイツを奥へとねじ込んでしまい、その異常な強さが垣間見えた。
まるで"蝶竜?"のようなそれがこっちを向く。
⋯ヤバい
⋯逃げないと⋯!
鎌を構えたまま、少しずつ後ずさる。
⋯何も⋯してこない⋯?
その"蝶竜?"はよく見ると、左腕にL.S.を付けていた。
⋯え?
⋯あの⋯L.S.って
気付いた時にはもう遅く、"蝶竜?"は飛び跳ね、アイツの方へと行ってしまった。
⋯あれは間違いない
何度も傍で、何度も何度も見てきた。
⋯ダメ、意識が持たない
目が霞んでいく。
あの"蝶竜?"がヤツを壊していく。
動く度に弾ける"虹の粒子"。
私が起きている間に最後に見たもの。
あの"蝶竜?"が私に近付いてくる様だった。
♢
「⋯良かった、ユキ姉起きたッ!!」
「周りのヤツらがしつこくて、遅れてすみません」
「ユキちゃん、血を流して倒れてるから、心臓に悪かったよぉ⋯」
起きると、みんなに心配されていた。
周りを見ると、もう何もいなくなっていた。
あの"蝶竜?"がどこにもいない。
後ろにも上にも。
「あんまり動かない方がいいよ、また血がで⋯あれ?」
ヒナが血を辿って、私の右脇腹を見る。
「ユキちゃんって、医療の知識に詳しいの? もう傷口塞がってる」
すぐ見ると、完全に塞がっていた。
跡が無いくらいに。
⋯私じゃない
誰のおかげなのか、すぐにはっきりした。
「⋯ルイはどこにっ!!」
思わずヒナを掴んで言うと、
「ど、どしたの!? ルイさん、いたの?!」
「いた! いたの!! ついさっきここにっ!!」
その声に一気に周りが反応する。
私には分かる。
あれは絶対にそう。
生きてたんだ、やっぱり。
信じてた、ずっと。
早く謝らなきゃいけないのに。
一人にしてごめんって、早く。
「誰も見てないの!?」
一人も反応しない。
なんで⋯
絶対いたのに⋯!!
「そのルイ様は、どんな格好をしていましたか?」
不意にニイナが質問してくる。
「え⋯蝶の羽根が生えた人型の竜のような⋯」
「⋯私が一瞬見えたのは、"光った何か"がユキ先輩に近付くのは見えたんです。ですが近付くと消えて⋯ヤツらだと思って、急いだんですが」
「それ⋯それがたぶん」
「ルイ様だったと?」
「た⋯ぶん⋯」
段々と記憶が鮮明になってくる。
その時、一つの"大事な証拠"を思い出した。
「⋯そう! L.S.を付けてたのっ!! ルイと全く同じのを!!」
「本当ですか!?」
必死に話す私の姿を見て、カレンさんたちが先にこの階の捜索へと行ってくれた。
ここにまだ、ルイがいるかもしれないと信じて。
代わりに、ヒナ、ニイナ、ノノの3人が、私の様子を見るために残った。
「ルイさん、いるといいんだけどね」
「⋯こんな事言いたくないですが、可能性は極めて低いと思われます。どこかへ行ってしまう理由なんて、無いはずですから」
「そうかもだけどさぁ。ルイ兄⋯会いたいなぁ」
3人が話す途中、急に私の右ポケット辺りが光った。
何かと思って取り出してみる。
小さな"金のフィギュア"?
金の弓を持つ、"あの白いヤツ"の。
「⋯あ! これって!!」
「それ! "あの時の"に似てる!!」
ノノとヒナが急に大声を出す。
「"あの時の"?」
「うん! そんな感じなのをルイさんに使ってもらって、この槍が出来たから!」
「こっちは代表に使ってもらって、これになった!」
聞くに、"A.EL"になれるアイテムらしい。
なんで私が持って?
⋯そっか
入れて行って⋯
やっぱりルイなんだね、あなたは。
傷を治してくれただけじゃなくて、こんな物まで⋯
⋯彼の方が苦しいはずなのに、そんな時でさえ私たちの事を思って⋯
見つけるから、絶対に。
大好きな、あなたを。