「⋯戻ったか! 援護を頼む!」
集合地点には多くの警察官が囲んでいた。
これ⋯全部が敵なの!?
すぐに私たちも構える。
「はぁぁぁぁぁッ!」
カレンさんの目にも止まらぬ一閃。
彼女の肩にある"梅の花"が開花し、辺りに花が散らばる。
⋯速い
これがあの"梅の花の鎧"のバフ効果。
それだけじゃない。
ELに選ばれた"あの力"も加えられてだろう。
っと、見てないで手伝わないと⋯!
私は一つのズノウを選び出す。
〈白雪の目的地(スノーホワイト・デスティネーション)〉を放つと、奥に"巨大な氷のマッピング"が現れた。
"冷気の真空撃"がそこに吸われようにして幾つも続く。
その道中にいる敵全てを真っ二つにした。
「なんだ今のは!?」「おぉ!?」と新宿花伝が沸く。
松の人が「こっちも負けてられん!」と、激しい連撃を繰り出し、そこから一気に部隊士気が上がっていったようだった。
♢
「ふぅ」
ようやく大丈夫そうかな。
「ユキちゃん、また新しいの使ってたね」
「えぇ、この範囲ならこれがいいと思って」
「さすがぁ~」
「なに言ってんの、ヒナも凄いじゃない」
「いやぁ~」
「先輩方、置いて行きますよ」
「先行っちゃったぁ」とヒナが呟く。
ニイナは変わらず淡々としてるなぁ。
「ねぇユキちゃん、私敬語やめるね」
「いいけど、どしたの急に」
「もっと、仲良くいたいなって」
ヒナが急にくっ付いてきた。
「わ、ヒナっ!?」
「ぎゅー、ユキちゃん、ぎゅ~」
「もう、今だけね」
こんな時に何してんだか。
中央に集まったところで、数分の休憩を取る事になった。
ニイナがカレンさんに"さっきあった事"を報告している、天井から垂れてきた"アレ"や"石切リウ"について。
他は水を飲む人もいれば、軽食を取る人、たばこ休憩をする人など。
ヒナと少しの間二人っきりになる。
「全部終わったら、ニイナちゃん呼んで、3人でアイドルグループやらない?」
「急になんで!?」
「ん~可愛いから! ルイさんだって見る目変わるかもよ~?」
「うー⋯それは」
「名前はー、"サンスノー・クイーンズ"!」
「名前も決まってるの!?」
「ユキちゃんの雪と、ヒナの日で太陽と、ニイナちゃんはぶどうのクイーンニーナから!」
「ニイナだけ葡萄からなの、なんか笑う」
「いいでしょ、ちゃんと考えたんだよ~」
「でも、ニイナはやらないんじゃない? 忙しそうだし、いくら公務員副業できるようにはなったとはいえ」
「それがね~、もうOKもらってるよ!」
「え!? あのニイナが!? いつ!?」
「警察署来る途中! 後はユキちゃんだけ!」
⋯信じられない、そんなことある?
ニイナは絶対断りそうなのに。
警察やめようかなってよく言ってるけど、転職先候補とかだったりして。
帰りにでも問い詰めないと。
警察にこっちから尋問してやるわ。
「休憩終了! 準備できた人から3階へ!」
ここから3F、4F、5Fと警戒を怠らず進んでいった。
階毎に地震は起き、震度は徐々に大きくなってる。
それに比例するように、敵も段々に強くなり、全員の消耗も激しくなってきた。
部下の人たちは相当苦しそうに見える。
ここで2回目の休憩が入り、倒れるように休む人や弱音を吐く人も出てきた。
だけど、"ここからはどうやっても出られない"という最悪の縛りによって、彼らは無理やり起き上がるしかない。
そう、どうやっても出られない⋯
そんな状況で、やっと6階へ到達した。
そこにあったのは、
「⋯なに⋯これ」
"巨大な金のドア?"だった。
明らかに他の階とは全てが違った。
ドアの前には"大きな黒い看板"が付いており、【刑事課】と大きく書かれている。
ニイナはやっぱり知らない様子だった。
ここまで見てきて、同じ構造だったところは結局今のところ一つも無い。
意味不明な状況のまま、"さらに意味不明なもの"が目の前にある。
「おい、どうするカレン、入るか?」
「待て。あれを見ろ」
カレンさんの視線の先にあったもの。
"六角形の特殊なサイネージ"だった。
"謎の白い怪物?"のようなのが映っており、下に簡単な説明が書いてある。
〈これからの犯罪には、より強力な抑止力が必要であるとされ、【LWS-611】が政府より寄与されました。委員長の指示により、現在稼働中〉と書かれている。
「ねぇねぇ⋯なんか変な音しない⋯?」
?
ヒナと同様に耳を澄ます。
⋯なに?
この音⋯?
ドアの向こうから聞こえる。
中に何かいる⋯?
「この先、より危険な場所になるかもしれない。特に、"あの白いの"がいたら注意するように!」
「は!」
「松と竹とノノも、しっかりみんなを頼む」
「こっちは任せろ、さっさと終わらせて帰るぞ」
「腹も減って、疲れて眠くなってきたしな」
カレンさんたちが一つに纏まり、いつでも行けるというサインをこちらへと送ってきた。
後は私たちが行くだけとなった。
「⋯私たちも行きましょうか。さっきの音からして、嫌な予感がするけど⋯固まって行きましょう」
「⋯そうですね」
ニイナがフードと黒能面を付け直す。
それに習って、私とヒナも付け直す。
「よし! では、行くぞッ!」
カレンさんの大声と共に"巨大な金のドア?"が開いていく、激しく擦れる金属音を響かせながら。
もう少し心の準備をした方が良かったかな。
あの"白いヤツ"、嫌な予感しかしない。
♢
「ア、アァァァァ⋯アァァァァァ⋯」
なんでもう少し考えてから行かなかなかったんだろう?
充分時間はあったのに。
私も疲れてたから?
私たちなら大丈夫って思ったから?
言い訳なんてもう遅すぎる。
「ア、アァァァァ⋯アァァァァァ⋯」
⋯
⋯⋯
― "白いアイツ"は何もかもを払い除け、私の前で大きく口を開いた