「こんな事やれと言ってないぞ」
「(⋯げ⋯なんで代表が)」
「お前たちも何やってる!」
「す、すみません! もう止められなくて⋯」
「だろうな、ノノは言い出したら聞きやしない」
全身花だらけの鎧⋯?
その人は周りを叱り、ノノへと寄っていく。
「⋯だってこの女が」
「黙れッ!!」
急に飛ぶ怒声。
辺りに一斉に緊張感が漂り、萎縮する。
あのノノも黙ってしまった。
なにこの人⋯?
代表って言ってたけど、ここの代表ってこと?
「それは喧嘩で勝つために与えたわけではない。これ以上新宿花伝に泥を塗るなら次はクビだからな」
「⋯はい」
花だらけの人は一瞬ニイナを見たかと思えば、今度はこっちへと視線を移した。
「⋯ん? そのL.S.って⋯もしかして!?」
その言葉の後、またざわつきが始まった。
「嘘だろ?」だったり、「見た目違わない?」だったり。
私とヒナは今日はお揃いの髪型をしていて、いつもと違うのはそうだけど⋯
「死んだって聞いたけど⋯生きてたの?」
「⋯はぁ」
「亡霊じゃ、ない?」
「生きてます」
凄い足音で次はノノが寄って来た。
「ガチ!?」
「⋯?」
ノノはまじまじと私の顔見てくる。
目を凝らしたり、胸を見たり、足を見たり。
何されてんのこれ?
「ねぇ⋯もしかして、ユキ姉?」
「え?」
「可愛くなりすぎだって! ほら、三船ノノ! 覚えてない!?」
ノノは緑のフードをゆっくり降ろした。
私をよく見てと謎のアピール。
ん~⋯
ん⋯?
「⋯⋯あ! え!? ルイの家によく来てた!?」
「そうそう!」
「うわぁ! 懐かしい!」
「うん! ユキ姉いっつも私の事ルイ兄の妹だと勘違いしてたよね~!」
「あー、そうだったね」
「苗字が同じだからってさ~」
うわ、やっば。
見れば見るほど思い出してきた。
小学生の時、よくルイの家にノノが来てた。
家族同士が仕事関係で仲良かったんだったっけ。
さらには苗字が三船同士もあって、よく意気投合してたなぁ。
私が行った時にちょうどいる時多かったんだよね。
外で遊んだり、一緒にゲームしたり、勉強教えたり、いろいろした。
昔は"離れて住んでるルイの妹"かと、勘違いしてたんだよね。
「早く言ってよ~、ならこんな事ならなかったのに~」
「いやいや、こんな大きくなって見た目も全然違うから気付けないわ。私が知ってるのは"これくらいの時"なんだから」
"会ってた時のノノの大きさ"を手で表す。
「ちっさ!? そんな!?」
「そうよ。言葉遣いだって、全然違うじゃない」
「いや~、まぁいろいろあってね⋯これは昔のユキ姉の影響もあるからね!?」
「わ、私!?」
不意に花だらけの人が近付いてきた。
「ノノとはそんな関係だったのか。それで、昨日は凄い数に襲われたんだってね」
「もう死ぬ寸前でした。武器も出せない状態だったので」
「大変⋯だったんだな。支援組も逃げて帰ったそうじゃない」
「よく知ってますね。なので、こっちも必死で走って逃げるしかなかったです」
「よく生きててくれた。それで七色蝶は? 帰ってきた?」
「⋯⋯いえ⋯それに追加で3名が行方不明です」
「⋯そうか」
少しの間の後、花だらけの人は頭のヘルムをゆっくり取り始めた。
そこには、さっきの怒声とは思えない美人女性がいた。
肩まで伸びる綺麗な髪。
20代後半くらい?
え、この人が本当にさっきの声出したの?
「なら、この新宿花伝に手伝える事はない?」
「手伝い⋯ですか?」
「あなたたちの勇気のおかげで、私たちは咲く事が出来たのよ? ねぇみんな!」
その瞬間、新宿花伝全員の肩からパッと花が咲いた。
色とりどりの、ノノまでも。
「わぁ!?」
ヒナが少し喜んでいた。
私は、
「⋯ありがとう、ございます」
握手を交わした。
「頑張ってきてよかったですね! みんなちゃんと見てるんですよ、ユキちゃん! ね、ニイナちゃん!」
「⋯私は最悪の出会いですけど」
「あ、あはは⋯」
この後、ノノとニイナは何とか仲直りをするんだけど、ニイナが警察だと知ってからは、ノノの口調が急に丁寧になった。
⋯まぁ一般的にはそうだよね