「⋯誰が⋯雑魚だって⋯?」
え、今の声ニイナ⋯?
「⋯ふざっけんなよクソぶりっ子がァッ!!」
「ニ、ニイナちゃん!?」
見た目からは想像付かないほどキレていた。
ちょっと、どうしたらいいの!?
なんか昔の自分を少し重ねてしまった。
ルイに止めてもらう前の、中学時代の自分を。
彼はこんな気持ちだったのかな。
今でもイラついた時たまに出ちゃうし⋯
「人の事をL.S.見て勝手に決めつけやがってッ!! 勝負しろクソぶりっ子ッ!! ルイ様の偽物がッ!!」
「誰がぶりっ子だぁッ!? お前だって勝手に決め付けてるだろッ!! このクソヤリマン女がッ!!」
二人の悪口は止まらず⋯
結局収集付かず、1対1の勝負になってしまった。
「あーあ、こんな雑魚相手してる暇ほんとはないんだけどな~」
「黙れ、クソ慢心ぶりっ子。ヤバくなったからって途中で逃げるなよ」
「⋯いい加減にしろよ、口だけクソヤリマン女。それはお前だろうが」
ルールは、一応首元に武器が届いたら勝ちにはなってるけど⋯
この二人だと、どこまでしてしまうか分からない。
最悪の場合、私たちが乱入して止めないとかも。
ちなみに、他の新宿花伝の人は比較的いい人たち。
「ノノさん⋯前は優しかったのになぁ」
「何かあったんですか?」
「ELになった瞬間、変わってしまったんです。我慢していた分を爆発させるかのように⋯"Another ELECTIONNER"っていう特殊なルートではあるんですけど」
「"Another ELECTIONNER"って⋯ヒナと同じじゃない!?」
「!?」
会話を横目に、対決する二人の状況を見る。
ちゃんと見ると、あの銃剣は"知っている銃剣"とはまるで違った。
彼女が構えると、"幾つもの桜?"が銃全体に開花する。
さらには、蝶の羽根が"桜模様?"へと変色した。
さっきまで白く発光していたのに。
「ふーん、弓か。そんなんでやろうっての?」
「やれば分かる。さっさと来い」
ニイナが黒能面を付ける。
「ほんと口だけは達者。やめてって言っても、もう遅いからなッ!!」
ノノから不意な一撃が放たれた。
「!?」
「なにあれ!?」
私とヒナが同時に驚いた。
"数字の7"の形をしたビームが出現したからだ。
でも、それを物ともしなかったのがニイナだった。
突然、弓に口ができたかのようにそれを吸ってしまった。
「はぁ!? 吸収した!? 弓なのに!?」
大声で驚くノノ。
淡々とニイナは、吸収したビームをそのまま放った。
「ッ!?」
ノノが必死に銃剣ではじく。
急に周りがざわつく、ニイナの強さに。
私だってまだ全然知らないんだから、あの子の事。
今度はニイナが仕掛けた。
弓とは思えない距離へと詰めていく。
「お前弓だろッ!! 意味分かんないッ!!」
「⋯バカな固定概念」
弓の上部分から鋭い刃が現れ、なんとニイナは至近距離戦へと持ち込んだ。
削り合う刃同士から、鈍い効果音が飛び交う。
誰がどう見たって、あの銃剣の方が有利のはず。
一体何を考えて⋯
「キモすぎッ!! ⋯能面⋯ドス黒女ッ!!」
「うっさいッ!! 慢心ぶりっ子クソ花女ッ!!」
改めて警察は敵にしたくないなと感じた。
もし逃亡した場合、あんな風に追われるのかな。
一生逃げられなさそうで、それ以上考えるのをやめた。
♢
「はぁ⋯はぁ⋯」
「⋯まだ⋯やんの⋯?」
「⋯当たり⋯前だろ」
序盤奇策で押していたニイナだったけど、徐々にノノが追い付いていった。
やっぱりELなだけあって、只者じゃない。
常にジャンケンであいこを出し合って戦ってるって表現でいいのかな。
ポンとお互い出したものが、どれも不思議なくらい同じ力量差。
でも、ほんとに誤差なんだけど、そうして競った時にELの方に性能差で軍配が上がってるように感じた。
このまま続ければ、ニイナが辛いのは本人も分かってると思う。
黒能面の1.5倍補助に身体が耐えられてるうちに、決め手が欲しいところ。
⋯根性なら絶対勝ってるのに
いける⋯あなたならいける⋯!
あれだけやれるなら、ELだって超えられる。
いつの間にか応援に力が入っていた。
― 二人が再びぶつかり合おうとした時
「そこでなにをしているッ!!!」