この"赤いヤツ"と対面する度に思い出す。
陸田さんから逃げたあの日を。
あの人はまだ大学にいる?
今ならどうにかできる?
思いが尽きないまま、戦いは進む。
〈白雪の
これには自動で〈N-飛弾〉が付与され、Nは敵の数によって変わる。
3つとなったブーメランは、それぞれの腕を貫通して吹き飛ばした。
私だって、何も変わってないわけじゃない。
返ってくるブーメランによって、さらに反対の腕も引き裂いた。
これでアイツらはもう銃を使えない。
今まではルイの〈虹女神の真加護〉でヤツらの銃撃等を防いでいたけど、今はヒナが頼り。
ヒナが代わりの〈天魔神の超重力〉を張ってくれている。
撃たれても、弾が勢いを無くして目の前で落ちていく。
これがなかったら、何回死んでる事か。
たぶんこういった違いが、"ELかそうでないか"なのかも。
最後はヒナの黒い雨と、ニイナの矢の雨が降り、アイツらの動きを完全に止めた。
あの部分だけ地面がかなり変形してしまっている。
「さすがですね、先輩。私には追い付けません」
「そうですか? ニイナちゃんも凄いですけど」
「⋯私は"ELECTIONNER"ではないので」
黒能面を外し、どこか遠くを見るような虚ろな顔。
"初めて見た時のヒナ"にどこか少し似ている。
あの時のヒナもELに憧れていた。
私には"あの力"で、ELに充分近付いてると感じたけど⋯
それでは足りないみたい。
でも、私たちは選ばれたくて選ばれたわけじゃない。
「行きましょう。止まってるとまた来ます」
先を歩き出すニイナ。
ヒナがこちらへと駆け寄って来た。
「ね、ユキちゃん。ニイナちゃん卑下しすぎのような⋯」
「経緯は違うけど、前のあなたに少し似てるのかも」
「あー⋯」
「ヒナの言葉が効くのよ、良くも悪くも」
アスタ君の件で、余計に葛藤があったのかもしれない。
選ばれてれば、もっとやれたのにって。
⋯言えた立場じゃない
選ばれた私は"大事な人"を置いて行ったのに⋯
この後も何度かモンスターやネルトと対峙した。
赤いヤツらほどじゃないにしても、常に油断は出来ない。
♢
「新宿駅ね」
ここに来るまでに全く人を見かけなかった。
一人もいないなんて、そんな事ある?
見かけたのは"無用なサイネージ"だけ。
AI総理の宣伝、最新AIの紹介、新施設のあらすじなど。
⋯どこまでも侵食されている
いつもは緑の光漂う新宿駅、今は赤く光っている。
駅構内を歩いていると、やっと人を見かけた。
「あ、やっと人がいましたね」
ヒナが少し安堵する。
よく見ると、あの人たちの背中には大きく"新宿花伝"と書いてあった。
目立つ緑の服に黒い大きな文字。
どこかのグループ?
その中に一人、目を疑う存在がいた。
え⋯?
あれって⋯!!!
― 蝶の羽根に、よく似た形の銃剣
絶対に間違いない。
絶対にそうだ。
私は一目散に走った。
背中にピンクの文字で"新宿花伝"とある人物のもとへ。
いるならなんで連絡くれないの?
こっちからは出ないくせに!
生きてた!
ちゃんと生きてた!!
そう思い、肩に手をやった。
振り向いたその顔は、
⋯
⋯⋯
「⋯⋯え」
「ユキちゃん待ってください!」
ヒナとニイナが近寄る。
「⋯⋯誰?」
言う人物は⋯
⋯
⋯⋯
― 彼ではなかった
「なに?」
「あ、いや⋯」
「今ここで何をしてるんですか?」
ニイナが聞く。
「わざわざ処理してあげてんの、見て分からない?」
「⋯なにその態度」
「はぁ?」
「まぁまぁ、ニイナちゃん」
あっちも数人の男が"あの女"をなだめている。
"あの女"は「ELでもない雑魚が」とキレている。
性別も性格も、何もかも彼と違った。
一つも似ていなかった。