多くの人数が集まった新宿移動。
向こうは新宿駅で待ってくれているらしい。
「時間だな、それでは行こうか。各自、注意を怠らないように」
「あ、すまん! ちょっと、一つ聞いていいか?」
突然スエが手を上げ、主催者に質問をし始めた。
「どうした?」
「なんで"19時"に集まったんだ? もっと明るい方が行きやすかったろ?」
「それは思ったが、"新宿区からの指示"でな。このくらいの時間の方が、襲撃しやすいと言っていた」
「ふーん、まぁいいけどよ」
♢
渋谷駅に着いた時、ちょうど電車が来た。
簡易型エスカレーターが、すぐ用意され、3階へと乗れる事を示す。
「3階、行こっか」
ユキに続き、3階へと上がる。
上がる時、ユキが「初めて襲われた日、思い出すね」と小さく呟いた。
俺は「⋯そうだな」と。
今思えば、あんなのは本当に始まりでしかなかった。
その後は、君野先生との別れ、大学からの脱出、2回目の総理の記者会見、国会議事堂への突撃、そしてユエさんとアオさんとの出会い。
もっと最適解を取れれば、ユエさんもアオさんも裏部さんも、生きていたのに。
俺はぐっと唇を嚙み締めた。
⋯殺す、絶対に
「まだ、悔やんでる?」
隣のユキが顔を覗き込んできた。
「⋯当たり前だろ。絶対に殺す⋯!」
「ルイ⋯」
「お前がやるんだったら俺もやるぞ。警察の連中は総理の味方してるしな、もう役に立ちゃしねぇ」
「でも、いいんでしょうか、そんな⋯」
「んじゃ、黙って殺されろって言うのかよッ!!!」
ヒナについ大声を上げてしまい、騒ぐ周囲。
近くにいたアスタたちが近付いてきた。
「どうしたんだよ、らしくない」
「いや⋯ヒナごめん」
「いえ⋯」
「今日怖いよ君ら、何かあったの?」
シンヤがアスタの前へと出る。
「どうもこうもあったもんじゃねぇ。こっちで2人も殺されたんだ、"黄色いパーカーのヤツら"にな」
「"黄色いパーカー"? それって最近出てるっていう"殺人集団"の?」
「そう。アスタ君も気を付けてよ。深夜に襲ってくるみたいだから」
ユキの声に、アスタが頷く。
すると、アスタの右隣にいた一人が黒能面を取った。
「アスタ様は死にません」
端正な顔立ちで、急にそんな事を言った。
と思ったら、
「僕らがいれば、安全ですよ」
左隣の探偵までも、顔を出す。
「と、まぁ僕は大丈夫そうかな」
アスタは両方の肩に手を置く。
そんな態度のアスタに対して俺は、
「慢心するなよ、殺された人は"UnRuleの開発者"で、腕の立つ人だったんだ」
「え、開発者? って事は国家研究員の?」
「あぁ。お腹に赤ちゃんだっていた。なのにアイツらは、その赤ちゃんにまでナイフを⋯」
「⋯それは怒る理由がよく分かったよ」
「なぁ、お前も協力しろ、アイツらを根絶やしにする」
「それはいいけど、どこにいるか分かってるの?」
俺は横に首を振った。
「そしたら、"ニイナとカイ"の力を借りないとね」
ニイナは婦警、カイは探偵の名前か。
この二人は君野先生の金庫にまで捜査を進めた力がある。
「その代わり、条件があります」
婦警のニイナが俺の方を向いた。
「"イーリス・マザー構想"について、新情報があればすぐに教えてください。それと、総理まで私たちも連れて行ってください。三船様なら、それが出来ますよね?」
「⋯ふーん、それが条件か」
「嫌ならそれまでですが」
「いいや、随分と高圧的な婦警だと思ってな。条件はもちろんのむ」
「あのー⋯私ってそんな高圧的ですか? 皆そう言うし、警察やめようかな⋯こんなのヤダ⋯」
え、急になんだ?
突然ニイナは涙目で俺に訴えてきた。
「え、え? いや、えっと⋯」
「ダメだよルイ君、女の子には優しくしないと」
「な、なんかわりぃ⋯警察なんだからそれくらいでいいと思うぞ、自信持ってくれ」
「はい⋯ありがとうございます⋯でも性格直したいので、今度アスタ様と三船様が付き合ってください」
「「え?」」
まるでシンクロしたように反応した俺とアスタ。
この時、なぜかユキとヒナに「デート?」と問い詰められた。
⋯勘弁してくれ