「おい、どうしたんだ!? すげぇ声響いたぞ!?」
「ヤツらがおったか!?」
「⋯大丈夫⋯?」
後ろからスエ、キンジ、そして小さくハインの声が聞こえる。
俺は見向きをする事無く、ベッドへと寄った。
こんなのは現実じゃない。
現実じゃない。
現実じゃない。
現実じゃない。
現実じゃない。
"ベッド上のソレ"からは、"小さな命"が飛び出ていた。
その"小さな命"にはナイフが刺さっていた。
「⋯惨いな。知り合いだったのか?」
スエが話しかけてくる。
こんなのは現実じゃない。
「⋯⋯」
俺は何をしていた?
会議に参加?
意味が分からない。
この二人はずっと苦しんでいたのに。
どうすればよかった?
俺はどうすればよかった?
なんで早く帰ってこなかった?
なんで無駄話をしていた?
なんで呑気に食べていた?
なんでこれが想定できなかった?
なんで?
なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?
「この殺し方⋯もしや"最近出てきたアイツ"かもしれんのぅ」
キンジはこっちへと寄り、話を続ける。
「⋯アイツって⋯誰だ⋯?」
「数日前からこの現状に紛れ込んで、"人殺しをするグループ"があると聞いた。XTwitterでも、嘆いてるヤツが結構おる」
「あ、それ私も見た気がするぞ! いるんだな、ほんとによぉ」
「なんでも、"ネルトのマネ"をして首を取って殺すらしい。見るからに、そいつらが原因と考えていいやろうな」
"ネルトのマネ"?
首を取って殺す?
「⋯そいつら⋯どこに⋯」
「"深夜に行動する"のは分かってるらしいが、どこかはまだ分からん。ただ、"黄色いパーカーを羽織った連中"だと、言ってるヤツがいたな」
「⋯黄色い⋯パーカー⋯?」
「これを見てみぃ」
キンジは俺とスエにL.S.の画面を見せてきた。
そこには、XTwitterに上げられた"黄色いパーカー"の画像があった。
"黄色いパーカー"には血が散乱しており、「これを見かけたら注意」と書かれている。
この服に、俺は見覚えがあった。
あの時ユキとヒナを襲い、逃げたヤツの一人。
最後まで捕まえられなかったアイツが着ていた服。
⋯
⋯俺のせいだ
あの時に殺せなかったから。
不意に血の味がし、唇を嚙み過ぎている事に今気付いた。
「⋯殺す。こいつは絶対に」
「そう早まるな。こんなのを殺しても何も解決にはならんぞ」
「そうだぞ。ヤっちまったら、コイツらと同類に成り下がるだけだぜ? 他に良い方法考えようぜ」
「⋯」
⋯黙れ
こいつらは何も分かっていない。
この世界はどこまでも残酷で理不尽。
アオさんとの約束さえ、守れなかった。
死ぬ思いで助けた裏部さんさえ、守れなかった。
だから理不尽ヲ壊セ。
俺にはまだ"大事な存在"がいる。
視線を上げた先、ベッドの壁隅に黄色で書かれた文字があった。
【人殺しへの幸せな仕返し】
⋯
ハ ン ニ ン ハ オ マ エ ナ ン ダ ナ ?
♢
25日の19時。
俺たちは例の場所へと来た。
「おぉ、待ってたよ」
主催者は喜んだ顔を見せる。
当然アスタたちもおり、
「これからは一緒だね、よろしく」
「⋯あぁ」