「肉⋯肉が戻って来た⋯!」
「よっぽど食べたかったのね」
さっそく始まった2次会。
帰る人が大勢いる中、俺は残って立食焼き肉へ。
まぁ隣にユキがいるんだけど。
貪るように肉を取り、すぐに焼く。
迷う意味が分からないと、言われた意味が今なら分かる気がする。
こいつは食わなきゃ、後悔する⋯!
「七色蝶様。本マグロの大トロ寿司、取れたて黄トマトとバジルのサラダ、ノドグロの煮付けもどうぞ」
「おぉ~、わざわざありがとうございます」
「いっぱい食べてくださいね」
「⋯ねぇ、あの高槻って人とさっきより仲良くなってない?」
「少し話しただけだって」
「ふ~ん⋯それより、さっきから七色蝶って呼ばれてるのね」
「動画や配信で、俺たちの戦ってるところを撮ってたヤツがいたらしい。そこから勝手にあだ名が付けられてる」
「私は"死神女"って言ってくる人いたんだけど」
「ふっ」
「なに笑ってんのよ」
「わっ!? ちょっ!! 肉落ちるって!!」
2次会は23時頃まで続いた。
ふ~、食いすぎて腹パンパンだわ。
反対側では、シンヤ、ヒナ、レンナたちがスイーツと紅茶を楽しんでいる。
レンナに関しては、"スクランブル守衛隊"というグループのリーダーらしく、さっき連絡先を交換した。
「ねぇねぇ、あっちにはお酒があんなに種類があるのね」
「へぇ~、酒って全然飲まないんだよな」
「私も」
夜景を見ながら酒を楽しんでる連中もいる。
この場所は今24時間開放されているようで、様々な用途で使われているらしい。
「今日は来てくれてありがとう。一番に呼びたいと思っていたが、誰も繋がりが無くてな。それにしても弁が立つな、三船君は」
帰り際、主催者の人に話しかけられた。
繋がりが無いってのは、やっぱりアスタの方からもダメだったのか。
「いえいえ。またこういった機会があれば、是非参加したいです」
「なら、また次回を考えておかないとなぁ! と、言ったところで急で悪いんだが、頼みたい事があるんだが」
「⋯なんでしょう?」
「白石君のところや、他にもお願いしているんだが、私も新宿区の"都庁へと行く"という話に乗ろうと思う。あの場所にはまだ"都知事が残っている"という噂が最近出ているからな。総理に繋がる何かがあると睨んでいるんだが、どうだろうか?」
そういや、スエも行くって言ってたな。
一応、答えは既に決めている。
けど、独断で決めるわけにはいかない。
「もう夜も遅い、今すぐ決めろとは言わない。もし来てくれるなら、9月25日の19時までにまたここに来て欲しい。その日に行く予定だからな」
「⋯わかりました」
「また会えるのを楽しみにしてるよ」
また会えるのを、か。
そう言って数人連れ、主催者は帰って行った。
「で、どうするつもり?」
隠れていたアスタが突然現れた。
同様に黒能面を付けている者を二人連れて。
「⋯行くに決まってんだろ」
「そう言うと思ってはいたけど、他の意見は聞かなくていいの?」
「聞くには聞く。けど、聞かなくても、あいつらは俺が行くってたぶん分かってる」
「そりゃそうさ。君に付いて行けば、総理のもと、いや、"その先の黒幕"にさえ辿り着けるだろうからね」
「⋯は?」
「この大規模な事件、僕は"真犯人"がいると考えてる。これをすぐに見て欲しい」
アスタから突如差し出された"数枚の真っ黒い資料"。
そこの最初に、赤字で大きくこう書かれていた。
「【イーリス・マザー構想の失敗作の捜索について】⋯?」
「しーっ! 他の人にはバレないようにして!」
横で帰る人たちに対し、アスタたちが隠すように俺の間近に立つ。
「⋯なんだ、これ?」
「それ、どこにあったと思う?」
アスタはその言葉を呟くように言った。
「⋯⋯"新東京大学"だよ」
「!?」