明日そんな事あるなんて何も知らなかったな。
って、俺今日起きたばっかだった。
「もし参加したいなら、どうすれば?」
「おぉ、来る気になったか! こりゃ俺たちも気合い入れんとなぁ!」
「だったら私たちと一緒に来いよ! あんたらだったら絶対顔パス確定だから!」
「まぁまだ分かんないですけど、どこかで集まってから行きますか?」
「B1の出入り口に集合予定! 時間は17時な!」
「念のため、連絡先を交換しておきましょう~。こちら、私のを渡しておきますのでぇ~」
L.S.に"朝花ミオリ"が新しく追加された。
「ちょ、私のも!」
"倉岩スエ"、さらには「⋯ん!⋯」と言われ"水切ハイン"、他二人の"保月ナン"と"保月ノン"が追加された。
あれ、この二人って姉妹?
よく見るとそっくりな顔をしてるな。
「おぉい、俺とも頼むぞ!」
最後に"掛井キンジ"が加わり、一気に連絡先が増えた。
前はLINEとかあったけど、今ではアプリ経由すらせずとも、"L.S.自体"でそれ以上の事が出来るから、ほんと簡単に繋がれるようになった。
「二人って、姉妹ですか?」
「え、"ナンノンメイン"知らないのか!?」
スエが仰天顔で俺を見てくる。
「登録者500万人いって、テレビにもよく出てたんですけどね~」
「まだ伸びしろあるって事だよ、ノン!」
「いや、え、まだ?」
全然知らなかった。
ゲーム以外興味が無さ過ぎた。
「なんか、すみません⋯」
「いやいや、私たちの頑張りが足りないって事なので!」
「頑張ってるんだけどね~」
ノンの方キレてないよな⋯?
姉妹で性格が真逆っぽいぞ。
今後はもっといろんなジャンルを見るようにしとこう⋯
こんな繋がり出来ると思ってなかったしな、ヒナといい、この姉妹といい。
「そろそろ戻るので、また連絡します」
「あぁ悪かったな止めて! ちゃんと寝ろよ!」
それこっちのセリフ。
この後、戻ったら別れたユキが俺のベッドで寝てたっていうのは、もう言う必要は無い気がする。
♢
「ここだ、ここ!」
俺たちほんとに来て良かったのか⋯?
上に大きく【都心5区選別者会議】と書かれている。
渋谷スクランブルスクエアの46階"SKY GALLERY"。
日が落ち始め、周りに見える建物にそれぞれ明かりが灯り始めている。
ここには数回来たけど、こんな目的で来る事になるなんて。
受付が厳重だな。
俺たち場違い感凄くないか⋯?
これで顔パスなんかなったら、逆に問題だろ!?
「こちらで"ELマーク"で受付をお願いします」
受付のお姉さんが話しかけてくる。
「よーし」と隣のスエが声を上げると、
「んじゃ、私からな」
先に受付横の"読み取り機?"へと行き、認証を始めた。
置かれたのは"紫の銃"。
あれは"サブマシンガンのUZI"か?
こんなのもあるのかとまじまじ見ていると、「なんだよ、気になるか?」とスエに変な顔をされてしまった。
後ろでは、ユキ、シンヤ、ヒナとクレセントセテラ4人が騒々しい。
『認証成功。中へとお入りください』
置くのは"ELマーク"のある一人だけで良いらしく、グループの中の誰が置いてもいいみたいだ。
次は俺でいいんだよな。
ユキやヒナのでもいけそうだが、今は話の邪魔をしない方がいいだろう。
ちょっと不安になってきたな⋯
そう思いながらも、俺は"虚無限蝶の銃剣"を具現化させようとする。
すると、
「待った。出さなくていい」
「え?」
顔を上げると、黒い能面を付けた怪しい人物がそこにはいた。
なんだこいつ?
「受付さん、"この4人のうち"一人でもいたら、今後は通してあげてください」
黒能面は俺、ユキ、シンヤ、ヒナを順に指差し、そう指示する。
「はい。かしこまりました」
え、いいの!?
黒能面の言葉に反発する事無く、あっさり受け入れる受付。
「ほらな? 顔パスでいけるつったろ?」
いや、え?
流れ的にそうはならない感じだったろ!?
スエ含めたクレセントステラの5人は、俺たちが入れる事が分かると、そそくさと会場内へと行ってしまった。
「私たち、入っていいんだよね?」
「あ、あぁ」
ユキに返事すると、続々と入っていく。
「どんな感じなんだろうなぁ!」
「ルイさん、ありがとうございます」
シンヤとヒナも中へと入っていく。
そんじゃ、俺も。
と思った瞬間、黒能面が入口を遮ってきた。
「僕に勝ってから、通ってもらおうか」
「⋯は?」
「見てみたいんだ、"久しぶり"にね」
"久しぶり"に?
そう言うと、ヤツは"変わった形状の青黒い剣"を取り出した。
― 剣の左右から"2枚ずつの青黒い羽根"が広がり、辺りに羽根が散らばった
「⋯どういうつもりだ」
「嫌なら尻尾巻いて帰りなよ。七色蝶はここまでの人間、それだけだ」
「⋯」
俺はL.S.から、〈ゼロインフィニット・アークイーリス〉と書かれている銃剣を取り出した。
― 無限模様の蝶が広がり、0型の銃腹部から激しい光が噴射する
「ズノウは無し。首への寸止め勝負だ」
「⋯来いよ」
「この感覚はやっぱり君じゃないと味わえない! ⋯次こそは勝つッ!!」