「はい、聞いてました」
「俺は明日からまた動こうと思う。ヒナは具合はどう?」
「肋骨が4本ほどヒビがいってたみたいなんですけど、いけると思います!」
「い、いやいや!? ゆっくり休まなきゃダメだろ!? ⋯ごめんな、守ってやれなくて」
「違いますって! あんなに強い槍貰ったのに、無力だったから⋯でも、さらにコツは掴んだ気がしたので、次はもっと出来るはずです! なので明日、私も連れて行ってください! 走る事だけ、まだダメみたいなんですけど」
「まぁそんくらいだったらどうにかなるけど⋯マジでいいのか?」
「いいリハビリにもなりますから!」
「⋯わかった、そしたら俺がずっと傍にいるから、やれる範囲でやろう」
「はい! (いてて⋯)」
「(今いててって言ったような⋯)」
裏部さんと場所を変えて話そうとした時、ちょうどメッセージが入っていた。
「ルイさんが起きないと、私心配で眠れそうにないです」と。
俺だけがずっと眠ったままだったようで、ヒナもずっと心配してくれていたらしい。
ただ、まだ歩く事がままならなかったようで、メッセージ履歴や通話履歴を見返すと、ヒナだらけになっていた。
全部で200件以上あるか?
ヒナってもしかしてメンヘラじゃないよな⋯?
それでさっきの会話中、ずっとビデオ通話をこっそり付けていた。
ヒナに喋らせなかったのは、呼吸器を付けており、あまり喋らせない方が良さそうに見えたからだ。
大声を出すと痛いみたいだし、正解だな。
ヒナにはゆっくり寝るように言い聞かせ、俺も寝る事にした。
時間は〈2030/09/22 AM3:36〉。
こんなド深夜に付き合ってくれた裏部さんには感謝しかない。
自室まで後もう少しというところまで歩いた時、目の前から5人ほどの集団が歩いてきた。
この時間に誰かの見舞いか?
「ん? あんた"七色蝶"か?」
?
「いや、この顔は合ってるよな?」
「ん~」
気の強そうな女性が話しかけて来たかと思えば、おっとりした様子の女性が急接近してきた。
「合ってると思います~。この方ですね~」
「おぉ、やっぱりか! 会ってみたかったよ!」
「七色蝶って、僕ですか?」
「あんた以外いないだろ? あんな"特徴的なの"使ってるヤツは」
「はぁ。それで、あなたたちは誰ですか?」
「あぁ、すまんすまん。私は"倉岩スエ"って言うんだ、スエでいいぞ! んで、私ら5人は"クレセントステラ"っていうチームを組んでる」
「よろしくお願いします~」
「は、はぁ」
何が始まったんだ?
女子5人組が俺に何の用だ?
「あんたら有名だよなぁ~、特に"七色蝶"のお前だ。他のヤツらもヤバいが、特にあんたはなんか、"頭にピンとこない動き"をするというか、なんて言えばいいんだぁ?」
「う~ん、"超人外"とでも言えばいいですかね? 他の人が凄いので、その上、という感じでしょうか~?」
2人がぐいぐいと話しかけてきて、他3人はじっと俺を見ている。
この状況マジでなんだ⋯?
「あのー、それで用は?」
「え、いや、特にないけど。まぁ強いて言えば、うちのチームにすぐ入って欲しいかなって、あははは!」
「男手が欲しいですよね~、特にこんな可愛らしい顔して強い男性なら特に~」
「いや、ちょっと」
「やっぱ無理かぁ~!」
すると、近くの病室が開き、
「おいうるせぇぞッ!! 何時だと思って⋯ってお前ら!?」
「うぉ!? 昼間の!?」
髭が凄い中年男性とスエが驚き合っている。
「せっかくだ、ちょっと聞かせてくれ。明日のアレ、結局行くのか?」
「私らは行くぜ! そのための5人組だからなぁ!」
「おぉ。ワシらも参加するが、昨日一人やられちまってな。ちょっと遅れていく事になりそうだ」
「⋯でも⋯くるんだ⋯?」
ずっと喋っていなかった小さな女の子が口を開いた。
あの身長的に小学生だったりしないよな⋯?
違うって怒られそうだから言わないけど。
「こんな機会見逃すわけなかろう。なんとしてでも行くに決まっとるわい。他との交流も出来るわけだしなぁ」
「⋯そう⋯だね」
「あ、おい、あんたらももちろん誘われてんだよな?」
「? 何にですか?」
急にこっちに話を振られた。
誘われてるってなんだ?
「え!? まさか呼ばれてねぇの!?」
「"七色蝶さん"が誘われてないのはありえないですね~、明日抗議しますぅ?」
「⋯抗議⋯抗議⋯」
「おい! お前ら"七色蝶"って言ったか!? コイツか!?」
「そうだぞ! 拝んどけ!」
髭が凄い中年男性は俺に「おぉ~、蝶様よ~」と本当に拝み始めた。
なぁ、帰っていいよな?
という気持ちを抑えつつ、明日何があるのか聞いておく。
「明日、何があるんですか?」
「本当に何も知らないのですね~。明日スクランブルスクエアで、"都心5区選別者会議"があるんです~。ELに選ばれた方含めたグループが多く集まって、情報交換や対談をする特別な会議だそうですよ~?」
「⋯でも⋯他の4区は⋯リモート参加⋯」
「えっとぉ~、よければご参加しませんかぁ?」