第二部☆金星のリラ
第三章☆白い鳥の王国
学校の旧校舎に行くと、小さい子どもが数人、鬼ごっこをして遊んでいたが、リラシナの姿を見つけて皆駆け寄ってきた。
「リラシナ。お話して」
「何のお話が良い?」
両手を子どもたちに引っ張られてリラシナは建物の方へ歩いてゆく。
ミリーは周囲の景色を見ながら後からついていった。
「『白い鳥の王国』が良い」
ミンという女の子が大声で言った。
「・・・昔々、白い鳥を大切に飼っていた娘がいました。娘はある晩、白い燕尾服姿の青年につれられて白い鳥の王国へ行きました・・・」
リラシナは何回も話したことがあるらしくそらんじて物語を語った。
「白い鳥の王国の王様は、娘が白い鳥でないことを理由に処刑しようとしました。娘が飼っていた白い鳥の青年は、『例え身体の色が違っても、種族が違っていたとしても、僕は彼女が好きなんです』と言って娘を助けると、命からがら白い鳥の王国を抜け出して、もとの家へ逃げ帰りました」
そこまでリラシナが話すと、ミンが勝手に続きを話した。
「娘と白い鳥の青年は末長く幸せに暮らしました」
リラシナはミリーに肩をすくめて見せた。
「本当は、家に帰ってみると白い鳥は死んでしまっていて、娘は哀しみにくれるんだけどね」
「初めて聞いた話だわ」
「どこかの地域で、白い鳥を神様と崇めてる所が発祥の話らしいよ」
「お帰り兄さん。・・・その人誰?」
パイソンが出迎えた。
「ミリー、妹のパイソンだよ。・・・僕らの育ての親が変わり者でね、小さな
パイソンは苦笑しながら、「兄さんは『リラ』って女の子の愛称で呼ばれてたわ。小さい頃は色白で本当に女の子みたいだったのよ」と言った。
「それで、お前の方は近所の悪ガキに男女って言われてしっちゃかめっちゃか喧嘩してたんだよな」とリラシナがからかって言った。
「兄さん⁉」
「おー、怖」
ミリーは、仲の良い兄妹だと思った。
学校の旧校舎に住んでいる人々に一通り紹介してもらって、ミリーはここに滞在することになった。
「いつまででもいて良いよ」と皆が口々に言った。
ミリーは嬉しかった。
「ここの人達は家族みたいね」とリラシナに耳打ちすると、
「そうだよ。大家族さ」と彼は笑った。