タムはベッドで寝転がって考えた。
おまけの包み。
ちょっと怖いものである。
多分入っているであろう、それを口に入れて噛み砕くと、覚醒をして、酒精術が使える。
タムのような身体で大丈夫だろうか。
「ねぇシンゴ」
タムは、カーテンと踊っているシンゴに声をかける。
『なに?』
「この包みの中、きっと銃弾だよね」
『命の水取引商からなら、そうだろうなぁ』
「銃弾を持っているだけなら、大丈夫かな」
『口にしなければ平気らしい。俺はそう思うけどな』
「よし」
タムは靴を脱いでベッドに上がった。
小さな包みを引き寄せて、
ベッドの上で正座する。
『お、あけるのか?』
「うん」
タムはうなずき、正面から小さな包みを見据える。
「では、あけます」
タムは静かに宣言すると、
包みを包んでいた、紐を解く。
柔らかい布で包まれた、包装を静かに解いていく。
布は幾重にも巻かれている。
タムはゆっくりはがしていく。
そして、きらりと光るものが見えた。
タムの心は、はやった。
慎重に、しかし心ははやりながら、ふわふわした緩衝用の布を取り除く。
そしてその果てに…
透明の銃弾が、3つ。
何か刻んであるようだが、タムには読めなかった。
銃弾は、小さな鎖でつながっている。
タムは恐る恐る銃弾とつながった鎖を手に取った。
ちゃら…
鎖と銃弾が小さな音を立てる。
タムは鎖の形を整える。
「ネックレスってやつかな」
タムは適当に、鎖を頭からかぶってみた。
輪になっていて、タムの首元に収まった。
胸元に銃弾が3つ。
「かっこいい?」
タムはシンゴにたずねる。
『背伸びしてるみたいに見える』
「なんだよそれ」
『大人になりたがってるみたいだな』
タムはぷぅと膨れて見せた。
シンゴは笑った。
『とりあえず、ジャケットに隠すようにしたらどうだい?』
「そうする」
タムは緑色のジャケットの下に、首にかけた銃弾を隠した。
「これでいつでも使えるってことかな」
『命の水取引商の、おまけだな』
「あんまり効果ないのかな」
『わかんないぞぅ』
シンゴがちゃらけた。
『もしかしたら、ものすごい銃弾かもしれない!』
「まさかぁ」
タムは笑った。
シンゴも笑った。
『とりあえずグラスルーツあるし、本当に気になったなら連絡すればいいだろ』
「どこ…ああ、オリヅルランさんに」
『そうそう、命の水取引商に』
「んー」
『どうした?』
「ある程度は自分で調べたいよ」
『勉強熱心だな』
「足手まといになりたくないんだ」
タムはひょいとベッドから降りる。
靴を履いて、とんとん整え、机と椅子の歯車を回す。
きこきこと歯車は回り、
机と椅子が倒れてくる。
「とりあえず、思うに」
『ふむ』
「この銃弾の名前がわかんないと、発動できないと思うんだ」
『なるほど』
「今から調べる」
『手がかりは?』
「さっき何か彫られてるのを見た。それと同じつづりならいいと思う」
『曖昧だなぁ…』
「がんばる」
『おぅ、がんばれ』
シンゴはカーテンと踊りに戻り、
タムは、本を取り出した。
『秘術酒精事典』。前にざっと読んだ程度で、
種類などの索引は見ていない。
もしかしたらオリヅルランは、
タムがこうして調べることも予測して、おまけとして与えたのだろうか。
タムはそんな気がした。
この透明の銃弾の名前はなんと言うのだろう。
タムは酒精の名前を目で追った。
山のようにありすぎて、どこから追っていいか悩んだが、
とにかくさっき見たつづり。
タムはぱらりぱらりとページをめくる。
透明のものだけでも結構ある。
どんな名前の命が溶かし込まれた銃弾なのだろう。
本に全てがあるわけではないが、
タムはいくつものページを追った。
ちりりんちりりん
送受信機のベルがなる。
タムが手を突っ込んでいないということは、誰かが連絡を取りにきたのだ。
タムは本にしおりを入れて閉じ、送受信機に向かった。