少し視線を斜め上へ向けると、街の向こうは山の尾根。
鉄塔みたいな展望台が見える。
きっと眺めがいいだろう。
いつも夢を見ているだけ。
希望が砂になってこぼれるような感触。
どんなに悲惨な結末を想像したとしても、ある種の希望となる。
だって、おれが失敗すれば父は嘆くから。
嘆かせてやる。
だって、おれが失敗すれば母は落ち込む。
ざまあみろ。
でも姉貴は兄貴と揃っておれを喫茶店で他愛ない会話。
なんだろう、この安心。
なんでかな、その笑顔。
失敗したんだよ?
世間体を壊しちゃった。
恥さらし、なんでしょう?
言いたいけれど言えなかった。
これ以上、自分を卑下したくない。
情けなくも、おれはおれを見下せなかった。
いつか登った記憶がある。
いつだったっけな。
またいつか、登りたいけどな?
『いつかって、いつだよ!』
自分の中から叫び声。
そうだよ、いつかなんて思っていたら時が経過するのを見送るだけ。
おれは歩き続ける、
いま歩いてきた道を、
この延長線上、
本来ならば帰宅につながる舗道をそれて、
ガードレールに区切られた狭い歩道を、
ゆっくり、さっきまでと同じペースで、
進む。
ああそうさ、いまから行こう行くよ登るよ、
展望台へ。