大抵のゲームと同様に、このゲームでもエリアはタウンとフィールドに分かれている。基本的に戦闘不可であり拠点エリアとなる
朱無王国周辺は草原のフィールドだ。手入れのされていない草木が無秩序に伸びている。
その草原に赴いてから十数分後。
「当たらない……当たらないよぅ……!」
私は両手を地面に着けて全身で挫折を表現していた。
私のすぐ目の前にいるのは『陸生
あっ、今、蛸が触手を広げてうねうねとアピールした。あの意味のない動き、絶対こっちを馬鹿にしている。私を馬鹿にしておるわ。ド畜生め!
「そりゃ当たんねえだろうよ。すのこ、お前、弓道経験なんかねえだろ? 素人が射た所で当たる訳がねえわ」
「そりゃあそうだけど……」
ぶっちゃけ予想通りではある。私だってそうそう命中はしないだろうなとは思っていた。でも、そこはゲームだし、何らかの補正とかあるんじゃないかとも期待していたのだ。実際は御覧の有様だけど。
なお、手持ちの矢はゲーム開始時から既にアイテムとして持っていた物だ。運営からの無料サービスという事らしい。本数は五十本。四十本使ったから残りは十本だ。矢の本数を増やしたかったら以降は自分で購入しなくてはならない。この出費の痛さが弓兵の辛い所だ。
「マイは良いよね、私と違って攻撃当てられるんだから」
マイの武器は剣だ。素人でも棒くらい振り回せるといった要領で、マイの攻撃は全て命中している。その堂の入りっぷりは現実でも喧嘩慣れしているのではないかと思わせる程だ。
「いや、そんな胸張れるもんでもねえよ」
だが、マイはそんな私の妬みを否定した。
マイが蛸に斬り掛かる。敵意を察した蛸は後方に跳んで回避する。だが遅い。その上、マイは蛸がそう動く事を読んでいた。追撃の刃が蛸の胴体に薙ぐ。剣の腹が当たったらしく、蛸が遠くに飛んでいった。「Q――!」と一鳴き残して蛸のHPがゼロになる。戦闘不能になった蛸は光の粒子となって消滅した。
「今のは斬撃じゃねえ、打撃だ。当たる事には当たるが、それだけだ。刃を立てられないんじゃあ剣を使ってる意味がねえ」
「んー。それもそうか」
当然といえば当然の結論だ。素人でも棒くらい振り回せる。逆に言えば、棒を振り回す以上の事が素人には出来ない。真剣を扱った事のある人間など滅多にいる訳もなし。一般人がいきなり凶器を自在に操れる筈がないのだ。
「まあ、その内どうにかなるだろ。慣れもあるし、技術力が上がるスキルもあるんだろ? 確か」
「うん、そうだね。
両手を地面から離して座り直す。
さっきも言ったが、この結果は予想通りだ。それでも戦えるようにする為に敏捷値に極振りしたのだ。