第一話 前説 戦争のオチのお知らせ

 何時も通り2人は店番をしていた、相変わらず店に人は居ない。


「今日も暇だ」

「そうだね、さてゲーム内では戦争が始まってしまいました」

「ああ皆張り切ってるな、特に強キャラ設定達」

「やられ役専門の人達も超やる気だしてた」


 実はレアスナタではやられ役をやるプレイヤーが多い。

 やられ役の演技で素晴らしい花を持たせられるからだ。


「で、長谷川君、一つ相談が」

「お、何だい?」

「この戦争のオチを考えたのよ」

「ほう」

「縁がさらわれて、スファーリアと風月が結びに戻る」

「ほほう……めっちゃ縁がヒロインだな」

「でもこの機会逃したら、ビシッと決める場面で元の一人に戻るイベントががが」

「なるほど、これはビックリ具合を出すために」

「出すために?」

「最後の最後でさらわれよう、一部の人達以外秘密でさ」

「なるほど、余裕でしたわーからの、縁拉致と」


 荒野原は簡単ま言葉でメモ帳に書き出した。


「多分スファーリアと風月も敵わない」

「いや、スゲー敵出で来たな? そりゃ縁連れ去られるな、んじゃ敵の目的は?」

「強さの理由は死んだ人達が実は生贄という形になっていて、黒幕強化、理由は、幸せになりたかったとか言って、縁の身体を欲したんじゃない?」

「縁の人生、結びと知り合う前は不幸続きだぞ基本」

「敵なんて好き勝手言うもんでしょ」

「どの創作物でもまあそうだな」


 長谷川は思い返す様に頷く。


「そして縁の身体に憑依したそいつは調子にのる」

「どうやって?」

「いくら界牙流でも、伴侶は殺せまい! 流派の思想に反するぞ! とか」

「……フッ、縁の愛した結びさんは問答無用でぶっ殺す」

「その心は?」

「『私の愛が有れば縁は蘇る、殺しても問題ない』と言いそう」

「当たり、そして界牙流初代様の奥義がある」

「名前は確か『伴侶』で、憑依した人物だけを消滅させるだったか」

「そうそう、ひいおじいちゃんがゲームやアニメ、漫画が好きだった人らしかったんだけど」

「ふむ」

「見たりやったりしたゲームや漫画、アニメがどれも自己犠牲だったり、大切な人が憑依されたりだったりらしい」

「それをたまたま引いただけでは?」

「後ひいおじいちゃんが中学生の時にそれを引いた」

「あー中二病真っ盛り?」

「うん、で、ノートに界牙流の設定を書き始めたと」

「おおー」

「あ、今度見る? おばあちゃんの家にあるよ? まあ今とは設定違うけどね」


 荒野原の発言に長谷川はビックリした。

 人様の設定、それは禁忌の書であるからだ。

 自分で見る様と人様に見せる様ではやはり違う。

 何よりも、当時中学生のひいおじいちゃんが書いた。

 その事実だけで何とも言えない気持ちになる。


「おいそれと見ていいのか?」

「ひいおじいちゃんが言ってたらしいんだけど」

「ふむ」

「見られるのは恥ずかしいが、書いてある事は恥ずかしくない」

「おお! かっこいい!」

「てな訳で、ひいおじいちゃんに負けない様に」

「負けない様に?」

「結びが縁を連れ去った奴をボコボコにして大団円って事でいい?」


 荒野原のその口調はスファーリアとも風月とも違う口調。

 おそらくは、まだあった事が無い結びの言いかたであろう。

 だが長谷川は平然と聞き返した。


「ああ、んで聞きたいんだが」

「何?」

「結びはどれだけ強いんだ?」

「全世界から縁を守れるくらいには」

「いやいやスゲーな」

「ひいおじいちゃんが書き残していた、自分の設定に胸を張れって」

「んじゃ気合い入れて連れ去られるか」

「まあラストのラストにだけどね」

「よし、ゲーム終わったら何時も通り飲みに行こう」

「打ち合わせですな?」

「ああ」


 今日もバイトが終わると2人でゲートへと向かうのだった。