何時も通り2人は店番をしていた、相変わらず店に人は居ない。
「今日も暇だ」
「そうだね、さてゲーム内では戦争が始まってしまいました」
「ああ皆張り切ってるな、特に強キャラ設定達」
「やられ役専門の人達も超やる気だしてた」
実はレアスナタではやられ役をやるプレイヤーが多い。
やられ役の演技で素晴らしい花を持たせられるからだ。
「で、長谷川君、一つ相談が」
「お、何だい?」
「この戦争のオチを考えたのよ」
「ほう」
「縁がさらわれて、スファーリアと風月が結びに戻る」
「ほほう……めっちゃ縁がヒロインだな」
「でもこの機会逃したら、ビシッと決める場面で元の一人に戻るイベントががが」
「なるほど、これはビックリ具合を出すために」
「出すために?」
「最後の最後でさらわれよう、一部の人達以外秘密でさ」
「なるほど、余裕でしたわーからの、縁拉致と」
荒野原は簡単ま言葉でメモ帳に書き出した。
「多分スファーリアと風月も敵わない」
「いや、スゲー敵出で来たな? そりゃ縁連れ去られるな、んじゃ敵の目的は?」
「強さの理由は死んだ人達が実は生贄という形になっていて、黒幕強化、理由は、幸せになりたかったとか言って、縁の身体を欲したんじゃない?」
「縁の人生、結びと知り合う前は不幸続きだぞ基本」
「敵なんて好き勝手言うもんでしょ」
「どの創作物でもまあそうだな」
長谷川は思い返す様に頷く。
「そして縁の身体に憑依したそいつは調子にのる」
「どうやって?」
「いくら界牙流でも、伴侶は殺せまい! 流派の思想に反するぞ! とか」
「……フッ、縁の愛した結びさんは問答無用でぶっ殺す」
「その心は?」
「『私の愛が有れば縁は蘇る、殺しても問題ない』と言いそう」
「当たり、そして界牙流初代様の奥義がある」
「名前は確か『伴侶』で、憑依した人物だけを消滅させるだったか」
「そうそう、ひいおじいちゃんがゲームやアニメ、漫画が好きだった人らしかったんだけど」
「ふむ」
「見たりやったりしたゲームや漫画、アニメがどれも自己犠牲だったり、大切な人が憑依されたりだったりらしい」
「それをたまたま引いただけでは?」
「後ひいおじいちゃんが中学生の時にそれを引いた」
「あー中二病真っ盛り?」
「うん、で、ノートに界牙流の設定を書き始めたと」
「おおー」
「あ、今度見る? おばあちゃんの家にあるよ? まあ今とは設定違うけどね」
荒野原の発言に長谷川はビックリした。
人様の設定、それは禁忌の書であるからだ。
自分で見る様と人様に見せる様ではやはり違う。
何よりも、当時中学生のひいおじいちゃんが書いた。
その事実だけで何とも言えない気持ちになる。
「おいそれと見ていいのか?」
「ひいおじいちゃんが言ってたらしいんだけど」
「ふむ」
「見られるのは恥ずかしいが、書いてある事は恥ずかしくない」
「おお! かっこいい!」
「てな訳で、ひいおじいちゃんに負けない様に」
「負けない様に?」
「結びが縁を連れ去った奴をボコボコにして大団円って事でいい?」
荒野原のその口調はスファーリアとも風月とも違う口調。
おそらくは、まだあった事が無い結びの言いかたであろう。
だが長谷川は平然と聞き返した。
「ああ、んで聞きたいんだが」
「何?」
「結びはどれだけ強いんだ?」
「全世界から縁を守れるくらいには」
「いやいやスゲーな」
「ひいおじいちゃんが書き残していた、自分の設定に胸を張れって」
「んじゃ気合い入れて連れ去られるか」
「まあラストのラストにだけどね」
「よし、ゲーム終わったら何時も通り飲みに行こう」
「打ち合わせですな?」
「ああ」
今日もバイトが終わると2人でゲートへと向かうのだった。