縁達が来たのは空と空気がよどみ、目の前にある街も蜃気楼の様に歪んで見える。
その街並みは、歪んでみえること以外は立派な街であり、入り口には男の門番が2人居るのが見えた。
「縁君、ここは?」
「『暗黒街信用』だ」
「善悪の音、団結の音? なんか不思議な街」
「昔、この街に喧嘩吹っ掛けてね」
「絆ちゃん絡み?」
「ああ、ムカついたから縁を大切にする人をトップにした」
「わお」
「その時に信用に変ったんだ」
「なるほど、この街の人達に協力してもらおうと?」
「ああ……縁の神様らしいだろ?」
「元凶は私が絶滅する」
「付き合うよ」
門番の1人が縁達に気付いて近寄ってきた。
縁は軽く手を上げると、門番は軽く頭を下げた。
「縁さんじゃないですか、お久しぶりです!」
「ああ、久しぶりだね」
「先輩、この方は?」
「昔リーダーを助けた人だ」
「え? 凄い人じゃないすか」
「……縁さん、街に入りたいならすみませんが、身分を証明で来ますか?」
「最近物騒だからな、リーダーと話がしたい」
縁は鞄から少々古ぼけた短剣を取り出して、門番に渡した。
「こ、これは! すぐに掛け合ってきます! お前は茶菓子集めてこい!」
「え? 先輩、ここの門番どうするんですか?」
「私が引き受けるよ、何、突っ立つてるだけでいいならね」
「あ、スティツァさん、よろしくお願いいたします! ほら! さっさと行くぞ!」
駆け足で門番達は街へと消えていった。
突然現れた薄汚いローブで全身を隠している人物、声から女というだけはわかる。
スファーリアはその人物を少しビックリして見た、何故なら彼女はローブ女の接近に気付かなかったのだ。
「……この私が気付かなかった?」
「職業柄ね、私はルティ・スティツァ……情報屋さ」
「情報屋さん?」
「ああ、少なからずあんたの事は知っている」
「スファーリアさん、ルティは凄腕の情報屋だ、知らない事は無いといっていい」
「わお」
「縁、襲撃されるとはどうしたんだい?」
「知らん、だからここに来たし、本気で潰す」
「……あんたがここまで怒るとはどうしたんだい?」
「子供達を使って俺を殺そうとした奴らが居た」
「子供? そこまでの情報は入ってなかったね」
ルティはゆっくり両手で拍手をした。
スファーリアが周りを確認する様に見ている・
「何があったか話してくれよ」
「暗黒短剣ゼッタイブッコロス、対価のナイフ、これを仕入れた奴らはわかるか?」
「んな危ない物を? ちょっと待て」
ルティはローブから古ぼけた本を取り出す。
本を開いき、右手の人差し指で頭を叩いて何かを考えている。
「ん~仲介人が多すぎる、割り出すにはちょっと時間かかるね」
「そうか」
「今回は割引しとくよ」
「何で?」
「あんた達の告白を知った旦那と熱い夜を過ごした結果、2人目がね?」
少々下品な笑い方をしながら、優しくお腹を叩くルティ。
「また告白か……って! 2人目? お前が結婚してた? え? ってか子供が居るのかよ」
「してたら悪いかい? 居たら悪いかい?」
「おめでとう」
「はいありがとう」
「ふむ、ここは1つ見てやろう」
縁はウサミミカチューシャを外して、何時もの神様モードになる。
ルティをじっと見る縁は複雑な顔をした。
「……悪しき縁が多すぎる、お前大丈夫か?」
「そりゃ情報屋なんざやってりゃそうなるよ、1人目の時もちょっと大変だった」
「待って、何かあれば私が力を貸す」
「え? あんたがかい? 何で?」
「貴女の音が素敵だから、理由はそれでいい」
「音で色々とわかるとは便利だね、ま、私も会話でどんな人物かわかるけどさ」
強者感を出しながら笑う2人、縁はそれを見て何してんだと内心思う。
だがルティの次の言葉が縁達をビックリさせた。
「んじゃスファーリア、私達はママ友って事でどうよ?」
「ファ!?」
「その音は高いファね、それよりも……ママ友、よろしくお願いします!」
「ああよろしくな」
お互いに通じる所があったのか、あっさりとママ友になった2人。
スファーリアに子供が居ないとツッコミを入れるのはヤボだろう。
「よし、俺がグリオードに連絡してやろう」
「ん? あの砂漠の名前がコロコロ変わる国の王様に?」
「あの国なら心身ともに安らげるし、防衛力が凄いしな」
「それは知ってるけど、いいのか?」
「お前に昔世話になったからな、んでママ友なんだろ? 何か有ったら目覚めが悪い」
縁は鞄からカミホンを取り出して操作を始めた。
「今更だけど、2人はどういう関係?」
「昔あった戦争中にさ、ちょちょいと真実を言ったりしただけさ、私の師匠と一緒にね」
「真実? 元々の始まりが子供の誹謗中傷から始まったって事を?」
「言われない誹謗中傷に加担してるよとか、正義をかざす所に情報を売ったりね……簡単に言い過ぎかな?」
「聞いただけで地獄絵図、ん? もしかして縁君側の都合の悪い事はもみ消した?」
「裏の情報は師匠が完璧に隠してたね」
「凄腕、でも何で消したの?」
「師匠は子供好きだったからね、普通に考えて国を上げて女の子殺そうとするって可笑しいだろ」
「確かに」
突然、ルティのすぐ近くにローブ姿の男が現れた、手には報告書らしき物を持っている。
「スティツァ様、不確定ですが、縁さん達を襲撃した奴らの予想が出ました」
「ご苦労様、引き続き頼む」
「はい」
ルティは部下が渡した報告書を読むと、彼女はやっぱりかと言葉を漏らした。
「案の定昔戦争に関わってた奴らだ、ざっと見ても確定だなこりゃ」
「ほう」
「で、縁、今回はどう対処するんだい?」
「被害者面も出来なくさせてやる、俺と結びさんの時間を壊しやがって」
縁には珍しく、眉間にしわが寄るほど怒っていた。
スファーリアも無表情だが、今にでも誰かを絶滅しそうな雰囲気だ。
一緒の時間は何事にも代えられないのだろう。
「おおお……絆の時よりも覇気があるね?」
「お待たせしました縁さん、リーダーの場所に案内します」
「お迎えが来たね、もうちょっとここで立っててやるから、縁達を案内してやんな」
「ルティさん、ありがとうございます」
「またなルティ」
「また」
「ああ、今度茶でも飲もうや」
門番の案内で2人は暗黒街へと入って行くのだった。