縁達がスロット台が並ぶ場所に行くと、一本槍がスロットしていた、その近くには野次馬が沢山居る。
一本槍の近くに、絵に描いた様なタキシードに蝶ネクタイで、マイクを持って実況をしている人物が居た。
「どうやら一本槍君がスロットをしているようだ」
「凄い人だかりだけど、何か特別なスロットなの?」
「あれは実力が全てのスロットだ」
「実力? 目押しとか?」
「それでもいいし、音で判別してもいい」
「壊してもいいの?」
「無理だな、誤作動させるとかは出来る」
「それはいいんだ」
「遊びは技術のやり取りだ、親友が言っていた」
「なるほど」
2人はスロットをしている一本槍の方を見た。
「さあ挑戦者、倍率はついに50倍だ! 先程も説明したが、ダブルアップチャンスは、スリーセブン以外ハズレだ!」
「……いえ、ここで止めます」
「おおっと、どうした挑戦者! ここで終りか!? 理由を聞いてもいいか!?」
「これ以上は僕の集中力が持ちません、そして観戦者が居ると気持ちが前向き過ぎてしまいます、これ以上の挑戦は無謀と判断しました」
「自分の実力をしっかりと把握している挑戦者に拍手!」
拍手喝采を受け居てる一本槍。
そんな彼を見ている2人に、絆が話しかけてきた。
「お兄様」
「おう、絆どうした?」
「あの一本槍さん、なかなかいい素質を持っていますわ」
「俺に傷を付けるくらいだ、強いぞ」
「私も手合わせしましたけど、負けてしまいましたわ」
「本気でか?」
「いえ、付け焼き刃ですが、お姉様に教えて頂いた演奏術で」
「お前が演奏術を?」
「お兄様? 神と音楽は深い関係にありますわ」
「いや、確かにそうだが」
「絆ちゃんはいいセンスをしている」
「お姉様に頂いたマラカスとの相性抜群ですわ」
絆はマラカスを召喚して、それを手に持った。
「いいのか?」
「構わない、入学祝いだから、それに楽器は人を選ぶ」
「今更だが、凄い楽器達だよな?」
「何時か縁君にも製作者を紹介する」
「お、それは楽しみだな」
「所でお兄様、私の制服姿はいかがでしょうか?」
マラカスをしまい、その場で1回転する絆。
「よかったな絆、やっと……人並みの幸せを」
縁は泣き真似をしている。
「お兄様、その言葉そのままお返しいたしますわ」
「ん?」
「お兄様も幸せではなくて?」
「ああ」
「で、久城さんでしたっけ? 何故お兄様方を見ながら、メモ帳を開いてるのですか?」
「私生活の密着取材です」
「なるほど」
「いやいや久城さん、記者みたいなムーブだな」
「はい、趣味爆発中です」
それだけ言うと、久城はメモ帳に何かを書いている。
「絆、桜野学園でやっていけそうか?」
「まあ、親子の会話が無くなって、久しぶりの会話をしたお父さんの様ですわ!」
「俺達の父さんそんな感じじゃないだろ」
「あ、居た居た絆っち」
そんなやり取りをしていると、天津姉妹がやって来た。
「あっちにバリバリでウキウキなボードゲームあった」
「ウチらと他に誰か誘ってやろうや~」
「ええ、いいですわよ」
「えに先生達もする?」
「……えに先生」
愛称に少々困惑する縁。
「あ、ごめんなさい、なれなれしかった」
「ああいや、愛称で呼ばれるとは思わなかっただけさ、そろそろ俺は帰る時間なんだ、長くなるゲームは出来ないな」
「そっか~……って、えに先生、帰る時はどうしたらいいのさ?」
「ああ、そのチップカードを本登録すればいい」
「本登録?」
「個人情報の登録だな、それすればドア開けた瞬間に自宅前か付近だ」
「おお、それは凄いな~」
「縁君、そろそろ」
「もう時間か……店長」
「お呼びでしょうかオーナー」
縁の背後に突然現れる店長。
「俺の生徒達の本登録と、オススメのアナログゲームを出してやってくれ」
「承知いたしました」
「俺はこれで帰るから」
「お兄様、私が最後までご学友をお見送りしますわ」
「頼んだ、絆」
「先生が帰るなら、私も皆と遊びましょう」
生徒達は縁達に挨拶した後、店長と共にアナログゲームが置いてある方へと向かった。
「嬉しそうね、えに先生」
「それで呼ぶのか」
「嬉しそうだったから」
「呼ばれた事が無かったからな」
「じゃあ愛称で呼ぶ?」
「君で呼ばれる方が嬉しいよ」
「それじゃ、帰りましょうか、縁君」
「ああ」
2人はカジノから出るのだった。