学事祭のパーティ参加条件としてフルメンバーというのがあった。
パーティを組む場合、自クラスというのもある。つまり、今回は
発表があったのは今日だったとしても、できるだけ早く編成終了して連携力を高めたいところ。
昼休み、教室で昼食を摂りながらの雑談をしていた。
そんな折、僕、
そして、僕は本題を切り出した。
「たぶん、僕が考えていることはみんなも同じだと思う。このままだと、僕たちはパーティ申請ができない。だから、なんとしてでもメンバーを集めないといけない」
「そうだね、最低でも後1人が必要だね」
「いやーっ、勧誘かぁ。私、そういうの苦手なんだよねぇ」
「うん……私も得意な方ではない、かな」
正直、由々しき事態に陥ってしまっているかもしれない。
他のみんなが苦手というならば、転校してきたばかりの僕ができるはずがない。
そうでないとしても、僕だって勧誘が得意ではない。顔見知りなら兎も角、こんな状況ではお手上げだ。
希望の星とも言える
「うーん、困ったねー。困ったねー。あ、
「いやー、私も無理無理ー。なんでかって言うのは、
「うっ、うん」
まるで見透かされていたかのような回答に言葉が詰まってしまう。
他は顔馴染み同士でパーティを組んでいるのは容易に予想ができる。
僕を除く各々も、どこかのパーティに加入するのであれば、そこまで難しくは無いだろう。
そんなことを考えていても意味がないのはわかっている。でも、こんなお手上げな状況に打開策を打ち出すことが出来ない。
全員が頭を悩ませていると、
「なあ……偶然聞こえちまったんだけど、メンバーを探してんの?」
「……え? うん」
「ああ、ごめん。盗み聞きするつもりはなかったんだが」
そこには、右手を首の後ろに回して申し訳なさそうにしている
「そこで、だ。俺も偶然とパーティを探していて、もし良かったらでいいんだけど……いや、俺をパーティに入れてほしい!」
それを見て、僕は戸惑いを隠せず目を見開いてみんなの方へ視線を向ける……と、みんなも大体同じ反応を示している。
視線を戻しても尚、頭を下げたままの一樹。
どうやらこの状況下で僕が判断を下し、それを言葉にしないといけないらしい。
……冷静に考えれば、断る理由があるのか?
僕たちは今まさに人手を探している。更には初対面でもない。今日話したばかりではあるけど、かなりの好印象だった。
これぞ千載一遇の機会と捉えず何と取るか。
「うん、わかった。僕からもお願いするよ、よろしく」
「お……おお! 本当か! 本当なのか! よっしゃー、よろしくな!」
返答を聞いた一樹は、下げていた頭をサッと戻してガッツポーズを取り始めた。……と、思ったらすぐに和らかい表情に戻って自己紹介を始めようとした時だった。
「改めて自己紹介を――」
「あ、あの! ちょっといいですか!」
一樹の話をバッサリと断ち切るように声が割り込んできた。
この場の全員から一身に視線を集めたのは、2人の少女。
体力測定のとき、謝罪の言葉を叫んでいた
第一声こそ声量はあったものの、続く声は雑音にかき消されそうなほど小さかった。
「あの、話してるところに割って入ってごめんなさい。パーティのことでお願いがあって――」
「あー、ごめんね。流れに水を差して悪いんだけど、パーティ編成にあたって人数不足っていうのが聞こえちゃってさ。……つまり、もしよかったら私たちもパーティに加えてくれないかなって話なんだけど」
と、長月さんの話をこれまたバッサリと切ったのは隣の彼女。
顔自体は見たことがあるけど、あの時謝られていた側の人とは違う髪型をしている。記憶が正しければ肩にかかるぐらいだったはずだけど、今目の前にいる彼女は背中まで艶のある黒髪を伸ばしている。
だがしかし、同じクラスメイトというだけで話したこともなく、本当に顔を見たことがある程度でしかない。
現状、彼女たちをパーティに加えれば8人のフルパーティを編成できる。
それは、願ったり叶ったりではあるけど、今日が初めましてという人を加えるのに抵抗がないと言えば噓になる。
誰かに助け舟を出そうと目線を配らせるも、一樹の時同様で、「志信が決めて」という無言のメッセージを訴えてくるのみ。
ええい、背に腹は代えられない。なるようにしかならない!
「うん、じゃあ2人ともよろしく」
「ほ、本当にー!? 私なんかがいて了承してくれるな――」
「ありがとう。じゃあまずは自己紹介をしておくね。私は
右足重心で腰に手を当てて、これまた一華の話をバッサリと斬ってしまう叶。
自分の番を強制的に奪われたのを受け入れがたいのか、口をパクパクさせてオロオロとしている。
あまりにも自然な流れすぎて、まるで何かのお笑い的なノリなのか、それともこれが日常的なのか違うのか。色々と考察はできるけど、このてんやわんやな感じだけでは何とも判断が付かない。
それでも、この流れを止めてしまってはもったいないから、気にせず流れに乗ることにした。
「う、うんよろしくね。僕のことも
「僕も同じく
「じゃあ俺も
「お好きなようにどうぞー」
「私も
「私も
そういえば、忘れていたけど一樹の自己紹介もバッサリといかれていたような気がする。
何事も無かったかのように乗ってくれているのは、ノリがいいのか特に気にしてないのか。
少なくとも表情に出てないということは、そこまで悪くは思っていないのだろう。
「ちょ、ちょっともー! 私にも喋らせて―!」
途中で自分の台詞をとられた一華は、顔をぷんぷんさせて両腕を曲げ伸ばして声を大きく抗議開始。
だけど、本人の顔の赤さとは裏腹に、この場の雰囲気は一気に明るくなり笑顔が沸き起こった。
これで一安心。この調子なら、今日の放課後にはメンバー申請が可能だ。