――放課後、教室窓側後方の席近辺に8人が集合している。
「集まってもらったのは他でもない。メンバー申請についてなんだけど、まだまだ期間はあるけど早いうちに決めておきたい。それについて各々の意見を訊かせてもらえないかなって」
「そうだよね、今回も言ってしまえば即席メンバーになるわけだし。早めに決めちゃって、意見交換とか練習とかそういうのに時間を割いた方が良いよね」
「うん、まさに
このやり取りを聞いたみんなの反応は、実に分かりやすかった。
「はいはーい、さんせーいっ」
「そうだね。僕もその方が良いと思う」
「そだねー、考えるより行動しちゃお」
以前よりパーティを組んでいたメンバーからの賛同はすぐに得られた。
それに、新規で参加してくれた3人も頷いている。
「僕たちは
「俺は全然問題ないぜ。むしろパーティに入れてくれるなんて感謝の言葉しか出てこないぐらいだ」
「そうね、私も同じ」
「うん……大丈夫」
爽やかな一樹、平静な叶、目線が下がっている一華。
各々の反応は違えど、承諾を得られた。
意思の確認は済んだ。
後は最後に記入を済ませるだけ。
「じゃあ、後は記入するだけだね。――あ、そうだ。リーダーを決めないといけないんだった。桐吾とか良いと思うんだけど、みんなはどう思う?」
と、一度、用紙に落としていた視線を上げると、誰からの返答もなかった。
ただ、僕にだけ視線が集中している状況。
――えーっと、これは……。
「僕だけの意見かと思ってたんだけど、他のみんなの意見も一緒だったみたいだね」
「そうね、異論はないわよ」
「そういうことだねー」
「はははっ、
口裏を合わせてないだろうけど、こんなところで連携力を発揮するのだけはやめてほしい。
それに、結月はなんでそんなに楽しそうなんだ? 絶対に面白がってるだろ。
「はぁ……半分諦めたけど、一樹、叶、一華の意見も訊きたい。もしも、リーダーをやってみたいっていうならその意見を尊重したい」
「いいや? 俺はそれでいいと思うぞ。俺にリーダーは絶対に似合わないだろうしな」
「そうね、私も絶対に無理だし、一華なんてどうあがいても無理。学園がひっくり返ったって無理ね」
「えぇぇ! 叶ちゃん酷いー! でも、間違ってないんだけど……」
「わかった。じゃあ、僕が今回のパーティーリーダーを務めるから、みんなよろしくね」
みんなから軽い返事が返って来たところで、再び用紙に視線を戻して記入開始。
僕から順番にとりあえず横流しにする。
そして、みんなが記入している姿を見てかなり今更感あるけど、クラスに関しては紹介し合ってないことに気づいた。
まあ、クラスを訊いたところで門前払いする気なんて毛頭ないけど。
先生へ提出する道中にでも確認できれば問題なさそうだ。
どんな編成であれ、時間はある。
「お、終わりました」
「ありがとう」
最後に記入を終えた一華はその細い指で用紙を渡してきた。
未だに目線を合わせてくれないことに少しだけ懸念材料は残るも、恐れられているとか嫌われている類のものではなさそうだ。
勝手な憶測だけど、いや、もしかしたらそれがあるかもしれない。男性恐怖症とか緊張症とかそういう類かもれない。
……いや、今そんなことを考えていては先が思いやられてしまう。
機会を伺って女性陣に訊いてもらうのが一番安心できそうだ。
「じゃあ、先生に提出してくるね」
教室を出て廊下を歩き出し、用紙を確認。
――――――――――
二年二組
名前 クラス
リーダー
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メンバー
・
・
・
・
・
・
・
後からの変更は、余程の事情がない限り受け付けません。
ですので、メンバー同士で良く話し合うこと。
尚、提出時はリーダーが直接担任教師へ提出を行ってください。
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これはまた……。
前衛が5人、後衛が3人。
一言で表すならば、アンバランス。
見方を変えれば、防御が硬いパーティ。
今すぐには陣形も戦術も思い付かないけど、これはこれで良い経験になりそうだ。
いち早く家に帰り、それらを練りたくて仕方がない。
偶然に偶然が重なってフルメンバーが集まった。
文字通り、奇跡のようなことが起きたと言っていいかもしれない。
でも、一安心はできない。何もかもが始まったばかり。
みんなで勝つため、僕も全力で取り組んでいきたい。