「あ、あなたはやめろ! なんか寒気が!!」
「え〜? 仕方ないなぁ。ふふっ……」
白くもこもこになった綺麗な泡と共にタオルが背中へと当てられると、冷たいそれにピクリと身体が震える。
ごしごし、わしゃわしゃわしゃ。
優しくもしっかりとした手つき。肩から背中にかけてタオルが擦られると、次は腕を横に広げるように言われて両腕を。流石に下半身は自分で洗わせてくれると思うが、それにしても上半身は全て洗ってきそうな勢いだ。
「お加減はどうですか〜?」
「く、くすぐったい。気持ちいいけどなんか変な感じだな……」
「にへへっ、じゃあもうちょっと強く擦っちゃお〜♪」
由那のごしごしによって全身が泡立ち、白に包まれていく。
というかコイツ泡立たせるのめちゃくちゃ上手いな。使ってるボディーソープはいつもと同じはずなのに。こんなにタオルが泡まみれになっているのは見たことがない。
「……どうしよ、凄く良いこと思いついちゃったかも」
「おい待て。一旦やめろ? なんかよく分からんけど嫌な予感だけがするぞ。だからまずは落ち着いて何しようとしてるのか言ってみろ。な?」
「せっかくこれだけあわあわなんだもん。二人分……足りるよね?」
「っ!!? ちょ、待っ────!!」
残念ながら手遅れだった。
一度好奇心に火のついた彼女を止めることなど、誰にもできない。
ぽにゅっ、ぽにゅん。
「〜〜〜〜〜!!」
「一緒に洗お? 節約節約っ♪」
背中から思いっきり抱きついてきたたわわが押しつぶされ、形を変えながら泡を広げていく。
まるでスポンジのようにされたそれを自由奔放に動かしながら、擦り合わせて。自分の身体も泡まみれにする事で二度手間を省きつつ、背中から回してきた手にはタオルが。
「このまま前も失礼しま〜すっ」
「やめ、バカ!! 当たってるって全部!!!」
「えへへ、かっこいい背中で私をドキドキさせた罰だよ〜♡ ゆーしの好きなおっぱい、彼氏さん専用のスポンジだからねっ♡」
何が罰ゲームだ何が! こんなのご褒美以外の何物でもない。
というかマジでやばいぞこれ。布一枚しか隔てずにほぼ直接的な攻撃を仕掛けてくる胸部圧は背中を刺激し、その上で優しい手つきと共に上半身全てを覆い尽くすようにして腕やらタオルやら泡やら色んなものがはちゃめちゃに襲ってくる。
これは本当にダメなやつだ。何がとは言わないが本当に危ない。反応しかねないやつだぞ、これは。
しかもコイツちゃんと押し当てている自覚がありながら行為を続けてやがる。ただでさえ格好が格好なのに……こんな状況で押し当てられながらは、流石にッ!!
「おい、離せっ! お前またそんな性懲りも無く……自分が何してるのか分かってるのか!?」
「分かってるよ〜。彼氏さんの背中に抱きついて一緒にあわあわ〜って。気持ちよくなってま〜す♡」
きっと、調子に乗っていたのだろう。
まだ″そういうこと″をした事が無いのは勿論のこと、大人のキスだってまだな俺たちだ。カップルとしては熟練度が足らず、未熟な二人。それだというのにこんなこと。
俺は正直、このされるがままの状態でいつまでも我慢できる自信が無かった。
だからこそ、振り返ったのである。
「いい加減に────おわっ!?」
「へっ!? ちょ、ゆーし……ひにゃんっ!!」
そしてそれが、更なる事態の悪化を招いたのであった。