「じゃ、じゃあまずは! 薫さんがどこを分かっていて、どこを分かっていないのか。それを知るためにテストをしますっ!」
「おぉ!」
結局ひなちゃんとは、放課後の教室で勉強することになった。
ここなら部活をしている奴らのおかげで学校自体が空いていることから、夜の六時くらいまではじっくりと勉強ができる。
それに加えて、学校で生徒用に開放されている自習室が七時まで使用可能だ。だから六限が終わるのを3時半として、そこから二時間半はひなちゃん付きっきりで。六時から七時までの一時間は教えてもらったところの復習や、問題プリントを解く時間に使える。
流石に今回は私も本気なので、七時までそこで勉強きた後は家でも猛勉強だ。そもそも数学とか理科みたいな暗記だけじゃどうにもならないものを除いた暗記教科に関しては、あまり教えてもらうことはない。そこはもう私がどうにかするしかないのだ。まあ、どこを勉強きておいた方がいいとかそういうのは聞くと思うが。
というわけで、そんな感じの心持ちをしていた私にとってひなちゃんの提案してくれた「どこを分からないかを知るためのテスト」というのは完璧すぎるプランだった。私の場合、分からないところを知ることからしないと話が始まらないからな。
「テストするのは数学、化学、生物、英語です。暗記教科は一旦除きますね」
「おうよ。……っていうか、テスト問題はどうやって?」
「あっ、実はですね。私もうある程度テスト範囲の勉強は終わってて。だから、テキストとか授業プリントの問題の数字を変えたりして今からテストを作ろうかと……。ご、ごめんなさい。三十分くらい待っててもらってもいいですか……?」
「え、いや勿論それは待つんだけどさ。そんなすぐにテスト問題って作れるもん?」
「任せてください! ちょ、超特急で仕上げちゃいますから!」
い、言っていることが凄い。
まず今日からテスト期間だというのにもう復習のフェーズに入ってるとか。いやまあ、放課後に一人優雅な読書タイムを決めている時点で余裕はあるのだろうなと思ってはいたけども。
にしても、だ。一教科ならともかく四教科分のテストを作るための準備時間が三十分て。
やっぱり普段から努力している人は違うんだなぁ、と心の中でひなちゃんを称賛しつつ。黙々とテキストを開いてはノートに問題を書き、開いては書きをしている彼女を横目に英単語帳を開いた。流石にスマホを弄るという時間の潰し方は、問題を作ってもらっている側として失礼だと思ったからだ。
(わ、すご。一瞬で集中モード入っちまった……)
多分、この調子だと本当に三十分もせずにテスト問題を作り上げてしまうのだろう。
いくらこの問題が私の理解度を測るものだとはいえ。あまりに点数が低すぎると恥ずかしいので、せめてもの足掻きだ。テスト範囲の英単語くらいはある程度予習しておこう……。
二人してだんまりを決め込み、手元に集中する。
単語は書いて覚える派な私は真っ白な新品のノートを広げ、端っこから英単語を連ねていった。
驚くことに。そここらは謎の集中力を発揮してしまい、次に英単語を書く手が止まったのはオドオドした様子のひなちゃんに声をかけられた三十分後だった。
────この三十分は、受験期以来のちゃんと集中していた時間だった気がする。