や、やりやがった……。
「ちょっ、薫!? そんなの反則じゃ!?」
「ふっふ〜ん。これが反則なんて取り決め、一つもなかったよなぁ? まあ安心しろよお。これでも加減は知ってるつもりだ。私が次王様になった時には大盛り上がりを約束するぜぇ?」
「ぐぬぬ、屁理屈ばっかり……」
「あっはは。やられちゃったね。これはもう諦めて参加し続けるしかないや」
「寛司お前……意外とノリ気だな」
寛司もまた、在原さん同様何か考えがあるのだろうか。
まあ中田さん一筋なコイツのことだ。間違いなく彼女についての何かなのだろうが。
というかこのメンツを改めて見てみると、全員誰に何をしたいのかと考えた時狙う相手が明確に決まっている気がする。
由那は俺で、俺もまあ由那だし。寛司は中田さんで、中田さんは寛司かワンチャン在原さん。在原さんは中田さん、由那、蘭原さんの誰かで、蘭原さんは……うん。命令したいと言うより多分在原さんに命令″される″ことが目的で参加しているのだろう。
名指しができない以上誰に命令が飛ぶかは分からないものの、全員共通しているのは命令したい相手が好きな
「ほれほれ、さっさと二回戦行くぞ〜」
再び全員が、割り箸を握る。
「「「「「「王様だ〜れだ!」」」」」」
「あ、私だ〜!!」
「う゛っ」
次に王様を引いたのは、由那。ニマニマとしながら全員の顔色を伺いつつ、命令を考えている。
「じゃあね〜、二番の人は自分の好きな人の好きなところ、十個発表してくださ〜い!」
「な、なんだそれ。絶対嫌だ……」
自分が二番ではないことを祈りつつ。全員が手のひらに握っていた割り箸の番号を確認する。
「二番、俺だね」
「へっ!?」
「あ〜、ゆーしじゃなかったかぁ。じゃあ渡辺君、有美ちゃんの好きなところ十個、お願いしま〜す!!」
「ちょおぉっ!?」
なるほど、由那はやっぱりこういう方面か。
全員の前で好きな人の好きなところを十個。このメンツなら在原さんと由那は結構スラスラと言ってしまえそうだな。
そして、寛司も────
「そうだね。まずはやっぱりこの可愛い顔かな。あとは長くて綺麗な黒髪に、まん丸な目。性格的な面で言えばこっそり可愛いもの好きなところ。それを恥ずかしいと思ってるところも可愛いし、なんやかんやで可愛いものをあげたらちゃんと喜んでくれるところも好き。あとは甘えん坊なところとか────」
「やめっ、もうやめて。これ、なんの拷問なのぉ……」
本来ならこれは言う奴が恥ずかしがることで実質的な罰ゲームのようになってしまう命令だったと思うが。結果的にダメージを受けていたのは中田さんであった。
曇りなき眼で、恥ずかしがるところか少しの迷いすら見せない寛司の言葉にやられて。かあぁっ、と顔が赤くなっていく。
「ふふふっ、いいね由那ちゃん。王様ゲームの才能あるよ。そうそう、こういうのがいいんだよこういうのが!」
「よ、よくないぃ……」
「あれ、俺今何個言ったっけ。分かんなくなったからとりあえずあと十個言っていい?」
「次! もういいから次行こう!! ほらみんな、早く割り箸薫に返して!!」
「えぇ。俺まだ有美の好きなところ、全然言い足りないんだけど……」
一つ目の命令から中々の被曝度でもうたじたじな中田さんは、寛司から割り箸を奪い取って無理やり在原さんに返却する。
俺としてはもう少し、寛司の言葉で赤くなっていく中田さんの様子を観察していたかった気もするが。ちょっとかわいそうな気もするから次に行こう。
「「「「「「王様だ〜れだ!」」」」」」