「……っ……う」
もちもちとした真っ白な肌は、まるで赤ん坊のよう。
しかしそれでいて色気があるのは、お腹にハリがあるからだろうか。手のひらを指だけ揃えて軽く広げた状態で、上下に。それこそ猫の背中を撫でるみたいな力で撫で回す。
「どうだ? 気持ちいいか……?」
「う、うんっ。なんかお腹、じんわりあったかくて……気持ち、いい」
初めは緊張からか力の入っていた彼女も、今ではすっかり全てを預けてくれて。甘い息と蕩けた瞳で、じっと撫でられている箇所を見つめるばかり。
いつもは猫のような奴だと思うことが多いが、今ばかりは犬のように見えた。この体制はあれだ、お腹を撫でてもらいたい犬がごろんとひっくり返り、無防備な姿を見せるあれ。
由那はいつでも俺に対して全てを曝け出しているし、自分から甘えても来る。それは実質的な意味合いで言えば今のこの状態と変わらないのかもしれないけれど。それを態度で見せてくるのと姿勢で見せてくるのでは、あまりにも俺の感性への刺激具合が違い過ぎた。
真っ白で、形が整っていて。肌触りも良く、ただそこにあるだけのおへそが女の子の変な色気を漂わせてくる。この異質な体制が見せるそれは、まるで服従の精神。
由那の全てを手に入れたのではないかと錯覚してしまうほどの優越感と、お腹を撫でることで発生する多幸感。それらが合わさり、俺の手を何度も突き動かす。
「お腹……もっと撫でて。ゆーしの手からしゅきが伝わってくる感覚、クセになっちゃいそうなくらい気持ちいい……♡」
ぽわっ、と由那のお腹の熱が一段と強まる。
お腹を撫でているだけなのに、変な気分になっまいそうだ。……いや、もうなっているか。
心臓は高鳴り、頭の中が由那でいっぱいになるこの感じ。キスをする時とは少し違った″背徳感″の混ざる、二人だけの行為。
「じわぁ……って。身体、熱くなっちゃうよ……。どうしよ、私今凄くワガママなこと考えちゃってる……」
「言ってくれ。由那のワガママならなんでも聞くぞ。俺に、どうして欲しいんだ?」
「……キス。お腹撫でながら、いっぱいキスして欲しい……っ♡」
「お安い御用だ」
膝の上に頭を乗せている由那の上半身を、背中を支えることでそっと起こす。
顔と顔同士が近づいて。我慢ならないと言った様子で俺を見つめてくる彼女と目が合うと、必然的に唇と唇は合わさり、柔らかい感触が伝う。
「ん……ふぅ。ちゅ、ぅ……。もう、一回……っ。まだ、離れちゃヤダ……ッ」
由那の唇は、とても熱かった。
お腹を撫でながらキスをすると、何度も擦られて強く発熱するカイロのようにどんどん。唇だけに限らず、彼女の身体の熱は上がっていく。
そしてそれと同時に、俺を求めてくれる行動がより顕著に現れた。右手は俺の左手との繋がりを求めて近づいてくると指を絡め、離さない。左手はそっと俺の腰元に回されて、もっと身を寄せろと訴えてくる。
「はぁ。はあっ。まだ、足りないよ。もう一回……シよ?」
「いいのか、由那。こんなずっとしてたらいつか人通って見られるかもしれないぞ」
「……見られても、いいよ。私たちのイチャイチャ、いっぱい見せつけよう……?」
「はは、本当にワガママだ」
ワガママだ。でも、由那が俺にワガママを言ってくれるのは嬉しい。
彼氏として、認めてもらえてるみたいな。そんな安心感があって。ワガママを受け入れるだけじゃなく、むしろもっと言って欲しいと。そう、思ってしまう。
(ある意味俺も、めちゃくちゃワガママなのかもな……)
やっぱり、由那の彼氏になれてよかった。
強くそう思わせてくれる彼女の唇は、いつも以上に甘く感じた。