すまない、と誰かが囁いた。
それはそれは悲痛な声で、聞いてるだけの私ですら妙に胸が痛くなるような、悲哀に満ちた声だった。
『謝って許されることではないのは分かっている。けれど私には他に成す術がない。
住み慣れた地を離れることがどれほどに辛いか、君を慈しむ者達から君を引き離すことがどれほどに罪深いか、それを分かっていて尚、私はこの手段を選んだ。
出来る限りのことはしたつもりだ。それでも足りないことは分かっている。けれどもう猶予はないのだ。
すまない。……本当に、すまない』
……いやなんかよくわかんないけど、そんな今にも罪悪感とかで死にそうになるほどじゃないと思うよ。のっぴきならない理由があるんだろうって言うのは何となく分かるし。
とりあえず衣食住が何とかなれば、人間には適応能力とか順応性とかあるし、住めば都っていう言葉もあることだし、多分大丈夫だよ。根拠ないけど。
『君は、優しい。その優しさを私は利用しようとしている。
……幾らでも罵ってくれて構わない。全ては私と、――私の種族の罪だ。本来なら関わることなく生を終えるはずだった君を巻き込んだ責は負おう。
お願いだ。見捨てないでくれ、私の世界を』
えええ、いきなり世界とかグローバルなもの出されても困るよ! こっちは平凡な小市民だよ!?
あ、でも小心者だから罵るとかしないから。っていうか種族って何。まさか人間じゃないんですかあなた。
深い深い、青色の――悔恨を秘めた深海の瞳と、銀色の髪、が。
私の意識に灼きついて、そうしてひとこと。
『チェンジリング』
それが、全ての始まりだった。