次の日だ。
俺たち。ケニー・ケイティ・サヤカの三人は。
人食い迷宮と呼ばれるものへ挑むのだが。
その前に、ある程度準備をしなければいけない。
まずはギルドでチームとして登録しなきゃいけないし。
初めて自ら危険な場所へ行くのだから、装備などをきちんとしなければいけない。
と言う事で、俺たち三人は朝から街へ繰り出した。
そして最初の目的地、冒険者ギルドへ訪れたのだった。
「よぉキャロル、朝から真面目じゃねーか」
「……なんだ、ケニーかニャ」
なんだその残念そうな目は。
そしてフワリと萎むな猫耳。
黒髪の真面目な服を着たネコ、キャロルと再会する。
何だか昔の事と思ってしまうが、こいつと初めて会い喧嘩したのはつい昨日の話だ。
まぁだが、流石に態度を改め。俺をきちんと客として接していた。
さてと。
俺たちは冒険者チームとしてギルドで登録をし。
人食い迷宮と呼ばれる『迷宮クエスト』を受けなきゃいけないらしい。
本来ならパーティーランクが高くないと行けないらしいが。
神級魔法使いのケイティが居ると言う事で。
なんとA級クエストまでは俺達でも受けれるらしい。
迷宮のクエストランクはB級からだ。
迷宮でB級なのだから、AとかSとかだとどんなクエストに行くんだろうか?
少しだけ気になるな。
とりあえず、名前を考える事になった。
「いうて短期間な編成だからぁ、名前どうする?」
「別に何でも良いんじゃないかな?」
と、ケイティが言うので。
「じゃあ俺が勝手に決めるからな」
「ご主人さまが決めるならボクは何でもいいですよ」
つう事で、適当に『ケサケキャット』と言うチーム名になった。
ダサイとか可愛すぎるとかのヤジが飛んできそうな視線を感じたが、俺はフル無視しつつ。
名前の由来は俺たちのイニシャルだ。
ケニーのケ。
サヤカのサ。
ケイティのケ。
キャットは適当に、俺とサヤカがマルを崇拝しているからだ。
「ふふん」
「………」
何だか知らんが、それで紙を提出するとキャロルが鼻を鳴らしていた。
おいキャロル。勘違いするな。お前じゃない。
うちの神聖なマル様に謝れ。
って事で、俺たち『ケサケキャット』は。
【東の七番迷宮】のクエストを受ける事になった。
何だかこれは現実味がある話なのだが。
迷宮の全ての入口が既に発見されているらしく。
それぞれの迷宮に番号が付けられているので、そこを冒険者が探検するらしい。
今回受けたのは『東側』にある『七番目』の迷宮。
そこは人々から、人食い迷宮と恐れられている場所だった。
クエスト内容はざっとこんな感じだ。
――クエスト情報――
場 『東』
番 『七番』
度 『B』
内 『いまだ探索出来
ていない部分の探索。
及び、出現魔物の調査』
と明記されていた。
クエストを受けなければ、迷宮に入る事が出来ないらしい。
そうゆう物なのかと思ったのだが。
どうやら、別に強制される訳でもなく。
適当に行って適当に帰ってくる。
入ったけど何にも発見は無かった。でも別にいいらしい。
何か新しい物を見つけた場合はちゃんと報告をしなければいけないらしいがな。
案外そこらへんは軽いみたいだ。
様は、クエストを受けなきゃ迷宮には入れないけど。
常駐のクエストだから成果が無くても全然おーけーと言う訳だ。
と言う、軽い説明をキャロルから受け。
俺たちは冒険者ギルドを後にした。
実際に迷宮に行くのは明日だ。それまでに、武器や装備を確認する事になった。
――――。
なんの看板もない店の前に俺たちは立っている。
凹凸が凄い道、傾斜に建てられたその店の前で。
「ここが武器屋か?」
「ええ、私がお世話になってる場所よ。信用できるお店だから」
と、ケイティが言う。
本当に武器屋なのだろうか?
なんか普通の民家に見ようと思えば民家なのだが。
冒険者ギルドの隣に店を構え、入口ののれんを潜ると。
広がっていたのは、壁に並べられた厳つい剣と盾。
そして鎧が店の中心に飾ってあり。
サヤカの「わああ!」と言う輝く目を横目に。
入口から一番奥へ進むと。
「また来てくれたのかい。ケイティさん」
優しそうなお爺さんが顔を出した。
身長はサヤカより少し高いくらいで、汚れたエプロンを付けながら何やら作業をしている様だった。
「この子とこいつの装備を揃えに来たんですけど、相談してもいいですかね?」
「ちょっとまてケイティ。こいつって俺の事か?」
「このエロジジイとこの子、どっちも魔法使いなんですけども……」
「待て待て進めるな話を」
そう静止を求めると、何故かため息を付きながら。
「なに」
「いや、俺をちゃんとした名称で伝えてくれよ」
「えぇ。ケニーって言いにくい」
「うそつけ!!」
ま、そんな冗談はさておき。
訂正だが、俺は確かに魔法使いだ。
だが。忘れたとは言わせないぞ。
「一応剣も使えるから、役職は『魔法剣士』だ」
ドドンッ!と。
胸を張って腕を組む。
驚けケイティよ!お前が旅に出てから俺は日々精進していたのだ!!
「あ、あれ?ケイティどこ?」
「ご主人さま。ケイティさん後はお願いしますってお爺さんに」
あっれー?
もうどっか行ったのかよ……。
「魔法剣士ね。そしてそこの子は魔法使いと。少し待っててね」
魔法剣士と魔法使い。そうお爺さんに伝えると。
そのお爺さんは胸ポケットからメガネを取り出し。
よいしょと歩き、カウンターから紙を出した。
そしてその紙に、羽ペンでメモを始めた。
「お兄さん服のサイズは?」
「そんなに大きくないぞ」
「ボクは一番小さいので」
とりあえず、サイズを伝えた。
そしてそこから、色々聞かれて、それを答えて行った。
どんな魔法が得意か、剣の種類はなにか。
個人的に技をするときこれがあったらいいとかあるか。
好きな色は何か、重いのは得意かとか。
必須アイテムなどなど。
そして全て答え終えると。
お爺さんはその書いていたメモを渡してきて。
「これ、上のアーレに渡してきてね」
「え……あ、はい」
アーレ?また違う人か。
まぁ取り合えず、その通りにしてみるか。
「……つうか、ケイティどこ行ったんだよ」
「あぁ、あの方なら上でアーレと話している筈さ」
俺の疑問に、お爺さんが答えてくれた。
いつの間にかいなくなっていたケイティは、上にいっていたのか。
少しくらい何か言ってから離れろよ……。
「分かりました。取り敢えず向かってみますね」
「そこの階段から上がっていきな」
このメモを渡せばいいのだろうか?
俺が想像していた武器屋と少し違うんだな。
俺たちは少しボロボロの階段を上がる。
すると、そこには三角帽子をカウンターに置き。
バーテンダーと喋るケイティが居た。
「おいケイティ。勝手に居なくなるな」
「へへ、ごめごめ」
悪びれてねぇな。
えっと……アーレって人は。
しどろもどろとしていると。目の前の居るバーテンダーが口を開いた。
「あ、僕にメモを渡してください」
「貴方がアーレさんですか?」
「ええ、僕がアーレです」
どうやら、ケイティと楽しそうに喋っていたバーテンダーがアーレと言う男だった。
珍しいボサボサの赤髪に、少し汚れた白いシャツの。少年?って感じだった。
「商品をお持ちしますので、ここで待っていてください」
と言われ、俺とサヤカはケイティの隣に座る。
サヤカはアーレから出されたオレンザジュースを飲み始める。
どうやらここ、本来は普通のバーであり。
お酒とか置いている本当のお店だった。
「昼間だから人が居ないんだけど、夜になったら凄いよ?」
「穴場スポットなのか?」
「そそ。穴場中の穴場だよ」
……穴場ね。
エマの時もそうだが、うちの人間は穴場スポットを見つけるのが得意なのだろうか?
「どう?ここのシステムは」
「説明もないから、いまいちだな」
「下の人に色々質問されたでしょ?」
されたな。
それがどうしたんだ?
「その内容で。その人にどんな装備が適していて、どんな武器が使いやすいかを考えてくれるんだ」
「え?じゃああのメモって」
「そ。お兄ちゃんとサヤカくんに合った最適な防具と武器が書いてあったの」
「なるほどな!すげぇ」
「で、その商品を。ここのアーレくんが倉庫から持ってくるって仕組み」
なるほどな。
どうして一度アーレと言う少年を経由させるのかは知らないが。
何らかの理由があるのだろう。
その後、アーレが大き目の箱を二個持ってきて現れた。
「えっと、こっちがお兄さんので。こっちがその子の装備です。試着していってください」
と言うので、俺は箱を開け。
中に入っていた武器や装備を着てみた。
おぉ!!
開けてみると、大き目の胸当てと、鋭い短剣が入っていた。
取り敢えず着てみる。
聞かれていたからだろう、サイズがぴったりだった。
それと、俺の好きな色を聞いてきたのはこうゆう事か。
「しっくりくるな」
「ありがとうございます」
「どうして短剣を選んだんだ?」
「メモには、お客様はまだ剣でも実戦をしたことがないと言う事でしたので。初心者用の短剣を」
なるほど、しっかり考えられてるんだな。
確かにそうかもしれない。
他にも色々入っていた。
腰に巻くベルトには短剣の柄を付ける事が可能で。
他にも頭巾を腰に括り付ける事が可能であり。
その頭巾に『
そしてなんと、短剣の柄には杖も収納できるスペースがあるのが驚きだ。
俺が魔法剣士だと理解してそうしてくれたのだろ。
そして、サヤカだが。
「軽いですね!」
「ええ、軽いもをお選びしました」
昔王都で購入した青色のローブの下に軽いが丈夫な鎧を着こみ。
サヤカも腰にベルトを巻き。
俺と似たような機能と共に。
魔道具などをかけれるスペースがベルトにはあった。
魔法使いだから、少し装備する物がないのだが。
魔力増幅用の魔石などを装備すればいいか。
そんなもんだ。他には。
色々入る丈夫なリュック。
石の道では滑りにくく、泥道では足を取られない革靴。
頭部を守るため、頭に巻くように装備する鉄板?や。
本当に役に立ちそうなものが揃えてくれた。
「私が払うから、着て帰るから全部装備しちゃって」
「お、おう!」
何だか俺も子供のようにはしゃいでいるな。
まぁだが、少しくらいいいだろ。
小説の世界だけだと思ってたこんな体験、胸が躍らない中年男性はいないはずだ。
とまぁ、この程度で今日は終わりを迎えた。
ついに明日は迷宮へ向かう。心して向き合おうと思う。
余命まで【残り185日】