「マツリ……、こういっちゃアレだけど、いっそのこと、『耐久力』メインか『知力』メインか、どっちかにしてくれないか? 高い防御力を目指しつつ、そのどちらも欲しいってのはさすがに欲張りだぜ……」
「あら、そうなの? ごめんね、デンカ。あたしは武具を生産できる鍛冶屋を持っていないから、その辺り、疎くて……。デンカはどっちが良いと思う?」
マツリが少し申し訳なさそうな声のトーンで、
「マツリは従者:ヤツハシに何を望むんだ? 戦闘中に倒れないことか? それとも、ギリギリ生き残りながらも、
「わかった。デンカ。あたしは従者:ヤツハシに戦闘で活躍してほしいって思ってるわ。いくら自分の従者だからって、甘やかしたらダメよね? デンカ、『知力』がメインで付与されている防具を選んでちょうだい」
「ほい。わかったぜ。んじゃ、防具の見た目は一切、気にせず、なるべく高い防御力で、体力は500。そして『知力』メインのモノを作成するぞ」
「おい、そこで暇そうにしているトッシェとナリッサ。俺がマツリの従者:ヤツハシの防具を見繕うから、その生産に必要な素材をバザーで見つけてきてもらうぞ?」
「ん!? 俺っちも働かなきゃならないんッスか!? そんなの聞いてないッスよ! 俺っち、今から自分の鍛冶屋の作れる生産品を増やそうと思っていたのにッス!」
ノブレスオブリージュ・オンラインにおいて、職業:鍛冶屋がある特定の生産品を作れるようになるには、まず、工房の親方NPCからクエストを受注して、それをクリアせねばならない。布製の防具の最上級品となると、グリファンの羽根を10枚集めなければならないといった感じである。
「ん……。トッシェ。それはいつだって出来るよ。トッシェのやる気があればの話だけど。デンカさん。何が必要なの? 出来れば、ログが流れてしまってわからなくなることを防ぐためにも、ディスコのグループチャットの方へ書き込んでほしい」
「ナリッサは話が早くて助かるわ……。それに比べて、トッシェときたら……。おい、トッシェ。ナリッサの爪の垢を煎じて飲ませてもらえよ?」
「ううう……。ナリッサは良い子ッスね。そんなのでマツリちゃんの得点を稼いでいるつもりッスか!?」
無駄話は良いから素直に、手伝うッスと言ってほしい
(だいたい、マツリは出会い目的でノブレスオブリージュ・オンラインをやっているわけじゃないんだよ。その辺りをいい加減、察してくれないものかねえ?)
やれやれとそう思いながら、それでも
それから10分後、ディスコのグループチャットに
「ふう。これで、従者:ヤツハシの装備はどうにかなりそうだな? マツリの方は、どの見た目変更アイテムを買うか決めたのか?」
それもそうだよな。なんたって、無料分とはいえ、1500メダルも消費するんだ。おいそれと決められないよな……。
「うーーーん。【
マツリは何か変なところにこだわりを持っているなと、
「あっ、デンカ。今、笑ったでしょ?」
「いいえ、笑っておりません。これは苦笑です」
マツリのムーーー! という唸り声が、ヘッドホン越しに
「よっし……。近い将来、あたしは団長から【オルレアンのウエディングドレス・金箱】を【結婚してでも奪い取る】のは確定事項なんだから、現時点で従者:ヤツハシが、あたしより目立つ格好してても挽回可能だわ……。あたし、ヤツハシに使う見た目変更アイテムは【
ようやく、決めたかと
「うッス。お待たせしたッス。俺っちたちが居ない間に、マツリちゃんにやらしいことをしてないッスよね、デンカさん!?」
するわけねえだろ、この色狂いがっと
「ん……。トッシェ、それは心配ない。デンカさんはヘタレだらか」
うっせえええ! と
「んっんーーー! トッシェ、ナリッサ。無駄話は良いから、さっさと素材を渡してくれ。あと、いくらかかったか、ちゃんと教えてくれよ? マツリが使う装備品だからって、
「別にマツリちゃんのためなら、どんだけ搾取されても良いッスけどね?」
「ん……。自分もそうだね。だから、今回は
トッシェはともかくとして、守銭奴のナリッサまで同じことを言い出すとは、
そんな
「トッシェ、ナリッサ、ありがとうね? このお礼はどこかで必ずするから」
「そんな、お返しを期待して、俺っちたちはマツリちゃんに何かをしているわけじゃないッス。なあ? ナリッサ」
「ん……。そうだよ。だから、お礼なんて考えなくても良い」
へいへい、勝手にほざいてろってんだと
ノブレスオブリージュ・オンラインを10年もプレイしてきた
そして、中身女性というプレイヤーたちも、そんなネット上での出会いに期待感を高く持ちすぎな男プレイヤーたちに嫌気をさしてしまう事案も
出来ることなら、この上手く回っている現在の