ヒーローと脇役の性行為があります。
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アントンが執務室から出て行った後すぐに、ルイトポルトは顔が火照りだして暑くなってきて襟元を緩めた。
「何だかいやに暑いな」
「香が効いてきたのです。耐性がついてくると、この程度では暑く感じません」
「香はどこだ? 消しなさい。窓を開けるぞ」
ルイトポルトがソファから立ち上がると、ペトラはルイトポルトに近づき、白魚のような手を彼の股間に当てて擦り始めた。
「あっ、な、何をする?!」
「殿下、この程度に耐えられなければ、簡単に宰相に薬を盛られて子種を搾り取られます。もう少し我慢してみて下さい」
媚薬成分はルイトポルトには効きだしていても、ペトラにはまだ効いていないようだった。
「私には、まだ効いていませんよ、ほら」
「や、止めろ……き、君はこんな事を……して……尊厳は、ないのか?」
「仕事ですから。貧民街で汚泥を啜って生きるよりずっといいですよ」
「……貧民街?」
「ええ、そこで施しを受けられるのを待っているよりもずっといいのです」
「や、止めろ!」
ルイトポルトが達しそうになった瞬間、ペトラに強制的に止められた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……もう止めてくれ……」
だがルイトポルトは、とうとうペトラの誘惑に陥落し、身体を繋げてしまった。するとすぐに乱暴に音を立ててアントンが執務室に入って来た。彼はパンパンと手を鳴らし、ペトラをルイトポルトの上からどかせた。
「殿下! ここまでにして下さい!」
ルイトポルトは、放心状態でだらしなくソファに半ば寝そべり、股間に無意識に手を伸ばしていた。
「仕方ないな。ペトラ、殿下を楽にして差し上げなさい」
ペトラに触られ、ようやくルイトポルトは、我に返った。
「あっ! や、止めろ! そ、そんな事、しなくて、いいっ!」
元々限界近かったルイトポルトは、少し撫でられただけで達してしまった。ペトラは嚥下してすぐに立ち上がってお仕着せを整え、執務室を立ち去った。
ルイトポルトは、達した瞬間に頭にかかっていた霞が晴れた気がした。正気に戻ったルイトポルトは、低い声で不機嫌そうにアントンに問いただした。
「……アントン、どうしてこんな事をした?」
「そもそも今までハニートラップ対策を何も取っていなかったのはまずかったんです」
「だからってこんな! 彼女の中に……入れてしまった、よな?」
「やはりよく覚えてらっしゃらないんですね? 殿下は確かにそうしてましたよ」
「ああ、そんな……こんなの、パティに対する裏切りじゃないか……」
ルイトポルトは両手で顔を覆って打ちひしがれた。
「何も童貞って訳じゃないんですから、他の女としたって減りはしませんよ。それに一瞬挿入していただけで子種を授けた訳じゃないですか」
ルイトポルトは閨教育の一環で未亡人を相手に既に筆おろしを済ませていたが、それ以降娼館にも行かず、女性関係に潔癖な向きがあった。
「お前の貞操観念は理解できないよ。お前の奥方が気の毒だ」
「彼女は何も知らないですから、それでいいんです。それに事が成したら離縁予定ですからね」
「私なら、そんな夫婦関係を望まない。だからこそ、こんな事をしたくなかったんだ……」
「殿下、甘いですよ。ハニートラップを避けられなければ、望まぬ女と子供を持つ事になるかもしれないんですよ。少々休憩されてはいかがですか? 私はちょっとペトラの所へ行ってきます。中途半端で終わってしまって疼いているでしょうから」
「おい! 待て!」
「すぐに戻ってきます」
アントンはそう言って執務室をすぐに出て行ってしまった。