ゴウという名前に嫉妬したままの一晩はとても苦しかった。何度溜め息を吐いた所で胸はざわざわと苦しいまま。
どうすれば僕の方を振り向いてくれるだろう。
いや、五年も待ってるくらいだから望みは薄いのかもしれない。
「はあ」
僕の恋はいつだって苦しい事ばかりで叶わない。
だけど、この恋ばかりはどうにか手に入れたい。
月見里さんの隣にいるのは僕でいたい。
「はあ〜〜、どうすればいいんだ」
今彼女はこんなにも近く、手に届く距離にいるというのに……。
心の距離だけは、どうあがいても近付く事はないのだろうか。
嘘の関係を本物の関係にしたい。
恋人ごっこではなく、恋人同士になりたい。
彼女に触れたい、手に入れたい。
でも彼女は好きな男をずっと待っている。
ああ、僕はどうすればいいのだろうか。
それに答えの出ないまま夜が明けた。
*
縁結びの神社に行きたいという友梨に対して何故か月見里さんは行くのを渋っている。
「友梨が行きたいなら行けばいいじゃん」
言ったあとで、今の言い方は悪かったと思ったのだが、悪い言葉は止まらない。
「元彼との縁を願えばいいじゃん」
そんな事言っておいてなんだけど、願わないよ、って言って欲しかっただけなんだ。
元彼なんて待ってないよって。
だけど月見里さんは言ってくれない。僕なんかに言う訳ないか――と、卑屈になっていく。
だからお守りを買うってなった時、元彼との縁を願っている月見里さんに選んでもらいたくなくて、友梨に「僕のも選んで」と言ってしまっていた。
違う。……本当は月見里さんに僕のを選んで欲しいと思っていた。
想いと言葉が逆になって出てくる。
神社を後に石段を下りる時も、湊くんが友梨に手を差し伸べたのを見て羨ましいと思った。
僕だって、月見里さんに手を差し伸べてあげたい。
素直にそうするべきだったんだ。
だからこれは僕のせい。ごめんなさい、月見里さん。
貴女に怪我をさせたのは僕が素直にならなかったせいなんだ。
僕が素直に手を差し伸べてさえいれば、貴女は石段を滑り落ちたりなんてしなかったのに。
ごめんなさい。
だから、今度は素直になるよ。