エーリカはホバート王国の新王都:シンプにのぼった後、精力的に動く。王都の周りに集まる兵は合わせて3万以上になっていた。その中でたった400の兵しかいない
しかし、エーリカたちは知らなかった。見境なく声をかけすぎたために、徐々にではあるがエーリカたちに対する目に見えない悪意が集まりだしていたのだ。それにいち早く気づいたのはエーリカの軍師である大魔導士:クロウリー・ムーンライトであった。
「はてさて。予想通りと言いますか。エーリカ殿が女性であることが気に喰わない連中があらぬ噂を王都に流し始めましたね」
「チュッチュッチュ。男尊女卑がそれほど強くないホバート王国でッチュウが、出る杭は打たれるっていう
「いいえ。特には何もしません。今は良い噂でも悪い噂でも、エーリカ殿の名が王都に広がることが肝要ですから。エーリカ殿への汚名はエーリカ殿の実績によって、打ち消されていくでしょう」
大魔導士:クロウリー・ムーンライトは信じて疑わなかった。エーリカがこの先、数々の武功をあげていくことで、その名声を高めていくことをだ。しかしながら、善のクロウリーに対して、クロウリーの悪心とも言えるコッシロー・ネヅは、ヒトの悪意はいつの世でも、服にこびりついた血糊や
だが、そんなことをわざわざクロウリーに忠言するほど、コッシローはおひとよしでは無い。クロウリーはエーリカの軍師なのである。君主の尻ぬぐい役は軍師が務めるべきであると考えるコッシローである。
(ボクなら【
コッシロー・ネヅは大精霊使い:ヨン・ウェンリーがとある禁術を用いて創り出した精霊であった。クロウリーとコッシローは元は同じ魂を持っていた。それを禁術により、無理やりコッシローをクロウリーの身から分離させたのだ。それゆえにコッシローは自分の片割れであるクロウリーの楽観ぶりにやれやれ……と嘆息せざるをえなかった。
「クロウリーが良いなら、ボクもそれに従うでッチュウ。分けられた魂の比重的に、クロウリーのほうがボクの
「妙に聞き分けが良くて、うすら寒さを覚えますね……」
「ボクはいじり甲斐のあるエーリカちゃんを気に入ってるでッチュウ。とんでもないポカをエーリカちゃんがやらかさない限りは、ボクもエーリカちゃんの味方でッチュウ」
「そこは先生がついてますから、エーリカ殿がとんでもないポカをやらかす危険はあまり無いと思いますよ。そうなる前に対処するのが軍師の役目ですから」
「わかったのでッチュウ。じゃあ、ボクはいつものように気配を消して、クロウリーの肩に乗っているから、次の人物を部屋に通すと良いでッチュウ」
コッシローは話は終わったとばかりに仕事机の上から、クロウリーの右肩へと飛び乗る。そこで隠形術を発動し、今から応接室にやってくる人物を品定めする準備に入る。クロウリーはコッシローの準備が終えたのを確認すると、部屋の外で待っている人物に部屋の中へ入ってくるようにと促す。
クロウリーとコッシローが居る部屋は、とある屋敷の応接室であった。エーリカ率いる
ケージ・マグナは父親であるカズマ・マグナにエーリカ・スミスを紹介する。カズマはジロジロとエーリカをまるで商品を品定めするかのようにじっくりとつま先から頭のてっぺんまで視線を動かす。そして、ふむっと頷き、バカな息子だがよろしく頼みますとケージをエーリカに預けたのだ。
カズマはそれだけでなく、エーリカを始めとして
エーリカを始め、
そして、エーリカたちは無名の一団である。エーリカとセツラ、そしてクロウリー以外の
城壁の外側に残した団員たちのまとめ役となったのは、コタロー・モンキー、オニタ・モンド、ジゴロー・パーセンである。彼らは元々、テクロ大陸本土で正規兵をやっていただけはあり、このような野外での寝泊まりは朝飯前にこなしてきた。
そんな彼らの労に報いるべく、エーリカを始めとする幹部とその補佐たちは王都内だからこそ出来る自分たちの仕事をこなしていった。クロウリーはその仕事の中でも、エーリカにとって最重要とも呼べる仕事をしていた。そう、エーリカたちが市中で見つけてきたり、