今上帝の御世になり、日ノ本の国は空前の好景気に湧いていた。長きに渡って続いていた鎖国政策が緩和され、禁止されていた異国との貿易が認められたからだ。
政の中心であり、帝がおわす、ここ、
目抜き通りの朱雀大路には、異国風のレンガ造りの商店が建ち並び、
その傍らでは、洋装姿の洒落者達が、被る
そんな昼間の雑踏は、日が落ちると様変わりした。
劇場やビアホールなど店の客引きが、大路で賑やかな声をあげ、戒厳令が下るにもかかわらず街へ繰り出している若者達を離さない。
何もかも、変わってしまった。
いや、これが新しい御世なのだ。
チラホラと、皮肉のような批判のような言葉も囁かれるが、東倞の街は異文化という多様な色彩に輝き包まれていた。この華やかさは、帝の御印、対の登り龍のごとく、天を突き抜ける勢いで永遠に続くものだと民は信じていた。
こうして誰もが豊かに暮らしているはずなのに、どうしたことか勢いについて行けない者がいるようで……。