第73話 追跡

 ん?

 誰かからメッセージが入った。


『ノノは君たち3人をずっと羨ましそうに見ていた。七色蝶にも会いたがってる、ここで燻るよりそっちの方が絶対いい。面倒をかける』


 素直じゃないなぁ、カレンさんは。

 直接言ってあげればいいのに。


 『責任持って面倒みますね』と返事する。

 こっちとしては、ノノがいてくれるのは心強い。


 昔からの仲でもあるし、他で死んだなんてなったら、ルイに会わせる顔が無い。

 それなら、私たちと一緒にいる方がいい。


「ふ~ん、じゃ、後輩?」


 ニイナがノノに顔を寄せる。


「⋯いいじゃん、そういうのは」

「ノノちゃんって今何歳なの?」

「18歳⋯です」

「ニイナちゃんと同い年なんだね!」

「まぁそんな感じはしました。絶対近いだろうなと」

「これからは仲良くしなきゃだよ~?」


 ヒナを"配信者のひなひー"と知って、「え!?」とノノが驚いていた。

 質問されまくりになってるし、これがやっぱり普通の反応なのかな。


 エレベーターがB20Fへ着くと、金のドアが開いた。

 なんとそこには、"未来のような地下鉄"が広がっていた。


「なにこれ⋯もう訳分かんない」


 ニイナがそっと呟く。


「どこも見る限り新しい⋯出来たばかりのようですね」

「あっちに電車があるよ!」


 ヒナの言う、電車がある方に向かってみる。

 そこには【新宿・品川方面】と【東京スカイツリー方面】の2つのプラットホームがあった。


 というかこれ、リニアモーターカーだわ。

 見た事無い真っ赤なリニア。


 こんなのがなんでここに⋯?

 ホームの壁のデジタルサイネージに、


『最新AIの独自技術 地下鉄の新常識 "紅膜超電動リニア"を体験せよ』


 って大きく書いてある。

 "紅膜超電動"?

 下に詳しく説明があった。


『風切り音を一気に軽減させる特殊な"紅膜"と、電気が非常に流しやすくなる現象"超電導"の未知なるタッグ。人間では成しえなかった世界を体験できます』


 ⋯AIって正しく使われれば便利よね

 こんな知らない事まで裏でやってる。


 あれ、【東京スカイツリー方面】の方にリニアが無い。

 と思った瞬間、ほんの少しの風切り音と共に、真っ赤なリニアが帰って来た。

 あまりに音がしなさすぎる、本当にリニアなの⋯?


「帰ってきたけど、これに乗って先に行ったって事だよね? なら、乗らないとかぁ」


 全車両のドアが開いた。

 ノノが真っ先に乗ろうとする。


「ちょっと待って。これに本当に乗るの?」

「黒夢、もしかして怖いのかぁ?」

「そうじゃない。安全かも分からないし、これに乗って行ったとも完全に言い切れないでしょ」

「そうだけどさぁ、他に無さそうじゃない?」

「⋯ここは先輩方に委ねます。本当にこれに乗りますか?」


 私はもう決まってるけど、ヒナはどうだろう。


「ヒナ、どう思う? 私は乗ろうかなって考えてる」

「んー⋯」


 その時、ヒナの背後で"蝶竜?のような何か"が、このリニアに乗る様子が見えた。


「⋯!」

「あ、ユキちゃん!?」


 追いかけて乗った瞬間にそれは消えてしまい、釣られて3人も乗ってくる。

 それと同時にリニアが動き出してしまった。


「乗っちゃったぁ」

「ユキ姉、どうしたの?」


 ヒナとノノが席に座りながら言う。


「⋯今、ルイがいた」

「それ、私にも見えました。あれが⋯"ルイ様"って事ですね」

「そう。L.S.がルイと同じだったでしょ?」

「はい。たぶん"これに乗れ"と言いたかったのではないかなと⋯でも、なんでルイ様が"あんな姿"に⋯」

「⋯わからない。さっき9階で戦ってる時も、ルイの声が急に聞こえて、アイツらが蘇る原因を教えてくれたの」

「声⋯ですか。私たちには聞こえなかったという事は、やはりユキ先輩だけ感じ取りやすいって事なんですね。幽霊⋯? いや、ルイ様がそんなはずは⋯この謎は解明しないと⋯」


 ニイナはぶつぶつと独り言を言いながら席へと座る。

 紅膜超電導リニアは"650km/hの速さ"も出ており、ものの3分ほどで"東京スカイツリーの地下"へと着いてしまった。


『"東京スカイツリー直下駅"に到着しました。お降りの際は足元にご注意ください。5分間、人の出入りが無い場合は"新宿警察署直下駅"へと向かいます』


「行きましょうか」

「えぇ」


 ここの駅は新宿警察署とは雰囲気が違った。

 "宇宙感がある?"という表現が正しいのかな。


「⋯あ! あそこにも"金のエレベーター"がある!」


 ノノが見つけたそれに近付くと、なんと1Fを目指して動いている最中だった。 

 ここへ来たのは正解だったんだ⋯!

 やっと追いつける。


 ⋯ここに来ているのが"誰なのか"に