ふと、松の人が口を開いた。
「おい、天井の"あのマーク"はなんだ?」
あれはなに?
"金の弓のマーク?"
そのようなのが天井にある。
的みたいにも見えるわね⋯
「なんか、怪しいですね」
こっそりニイナが呟くと、突如金弓を取り出した。
「これで狙ってみるのはどうですか?」
「⋯よし。ここは黒夢警官に任せてみようじゃないか」
下川委員長がニイナの肩を軽くポンポンと叩く。
彼女が「ありがとうございます」と返すと、
「⋯いきます」
刹那、風が吹き抜けた。
ジェットエンジンのかかった強烈な射的は、狂った速さで天井を貫いた。
と同時に、私たちの前にある壁が少しずつ下がり始めた。
あれは⋯"隠し部屋"?
「上手く、いったんですかね」
「たぶん⋯」
先を行き、"壁に隠れていた部屋"を確かめると、
「⋯あ! ここは知ってる署内です! やっぱりこっち側が"表"だったんですよ!」
「こんな事になっていたとはな」
"本当の新宿警察署"。
ニイナと下川委員長、続いて新宿花伝が"表警察署側"を確かめて回る。
その間、私とヒナは"裏警察署側"を続けて調べる事にした。
今ので何か変わった部分があるかもしれない。
「⋯こっちの上にもあるぞ! 同じ"金の弓のマーク"が!」
松の人の声だ。
"表警察署の方"にもあったのね。
ニイナが同様に射貫く。
すると、9階へと繋がるエスカレーターが上からゆっくりと降りてきた。
これって、金弓が使える人がいなかったらどうなってたの⋯?
私たちも出られなかったってこと⋯?
⋯いや、先に来ている人がいるって事は、きっと他にも方法はあったんだろう。
「これでやっと最後だな。みんな! 終わらせるぞ!」
「は!」
新宿花伝から先に上っていく。
まるで天に繋がってるかのような、長い長いエスカレーター。
この先に、誰かが既に来ている。
上って見えた光景。
そこには⋯
「⋯これって」
― 大量の赤いネルトの倒れた姿
真正面奥には、"巨大な金のエレベーター?"があった
「⋯! エレベーターに今誰か乗ってる!!」
一番に気付いたヒナが、巨大エレベーターへと駆け寄った。
上に表示された階層が青白く光って移動している。
「こんなエレベーターも、"B20F"なんて場所も見た事ない。ここは前まで緊急会議室として使用していたはずだが⋯」
下川委員長が辺りを見ながら言う。
ここも後で改築されたってこと?
ニイナも、もちろん何も知らない様子。
エレベーターには今"誰が"乗ってる⋯?
呼び寄せても意味無く、これはB20Fを目指している。
どっちにしてもこのままでは出られない、私たちもこれに乗るしかない。
私たちはエレベーターが戻ってくるまでの間、この広い空間を探索する事にした。
左右に5か所ずつ、"区切られた謎の部屋"があり、それをそれぞれ見て回る。
途中、新宿花伝の一人が、
「代表! こちらにも見つけました!」
「ほんとか!」
天井にまた"アレ"を見つけた。
ニイナの金弓によって、それは動きだす。
静かな機械音とともに、"下の場所"へと繋がっていく。
「これ、"委員長さんが閉じ込められてた8階"だよね?」
「⋯そうね」
ヒナの声に返事する。
このエレベーターは"裏新宿警察署の8階"へと繋がっていた。
「天井に"これ"を使うところが多いですね。下に繋がったなら、もう1回見に行った方がいいでしょうか?」
「いや、散々私たちが見たから戻る必要は無いと思う」
8階へ戻ろうするニイナを止めると、
「もうすぐエレベーターが戻って来るぞー!」
急に竹の人の大声が響いた。
もう戻ろう、これ以上情報収集する意味は無い。
戻ろうとした時、
「なんだ!?」
ただの壁だった場所が急に崩れ、そこから大量の赤いネルトと警官が現れた。
この警官は味方じゃない、中に小野田さんらしき人も混ざっている。
「小野田⋯」
「カレンさんこっちへ! この数は対処しきれません! エレベーターへ行きましょう!」
「⋯あぁ」
このタイミングで、エレベーターが大きな音を立てて開いた。
「全員走れ! 中へ!」
竹の人が叫ぶと、一斉にみんなが乗り始める。
その瞬間、
『このエレベーターは試験中のため、只今4人乗りです。次から50名まで収容可能となっております』
「なっ!?」
「おいッ!! テストなんてしてる場合じゃないだろッ!! 早く動けッ!!」
『このエレベーターは試験中のため、只今4人乗りです。次から50名まで収容可能となっております』
ヤツらがもう来てる!
⋯このままじゃ⋯!
他の人は疲れてきてる。
これ以上戦わせるわけにも⋯
「せ、先輩っ!!」
「ユキちゃんッ!?」
先頭にいた私は飛び出した。