第33話 協会最高責任者登場!


「双方!それまでぇぇ!」


ホール内に響き渡る程の迫力に、怒りに忘れていた進の自我が戻って来た、繰り出した拳の軌道を変更する為に右膝を曲げ床につけホールの天井めがけアッパーを撃つ様に拳を上空に向って打ち抜く


激しい衝撃波と爆風、爆発音と共に、ホール内は瓦礫とその破片、それと舞い上がる埃で前が見えない


「雫君!!」


雫が咄嗟の判断で防護障壁を張り、鳥居夫婦と五月は無傷だった


「ゲホッゲホッ・・・」


十文字達、サザンクロスのハンター達も分厚い盾でシェルターを作りその中に身を屈めて耐えしのいでいた


十文字は仲間のかざした盾の隙間から這うように抜け出ると、協会支部の天井を見上げ驚愕する


「ば、馬鹿な・・・上の階が吹き飛んでる・・・」


そこには怪しく輝く月がその場の皆を嘲笑うかの様に怪しく輝く・・そしてその月明かりの光の帯の先・・・瓦礫の上に立っている男の影


「アイツが・・・やったのか・・・こんなの馬鹿げてる・・・」


「!!?」


俺は天井を見上げて状況が呑み込めず惚けていたが上の階には真理恵さんと星奈さん由利さんが居たはず!


考えるより先に駆け出し、瓦礫で半分埋もれた階段に到着すると


「っつ・・間一髪・・・」階段の踊り場で防護壁を展開している由利さんの後ろには蹲っている真理恵さんと星奈さんが居た


「皆さん!!今、今助けます!!」


俺は由利さんの張った防御壁の周りの瓦礫を素早く取り除くと「み、皆さん!!ご無事でしたか!?」


真理恵さんも星奈さんも親指を立ててウインクで答えてくれた


「申し訳御座いません!!俺のせいで危険な目に・・・」その場で両手をついて謝る


「いやいや!!進が来なきゃ私らとっくにウエアウルフと高崎に殺されてたって!!」


「そうです・・進さんが、こんな事するなんて何か理由があったんでしょ?」


「進様・・・進様こそ・・ご無事で・・・」


何とか上のフロアに残して来た女性陣に怪我が無くて、安心したのか目の前の3人の美女の顔がぐにゃぐにゃに歪んで


「あ、あれ?・・」


俺は意識を失った・・・・


「全く・・・協会の支部をこんな状態にしてくれて・・・君達・・周辺住民や一般人の被害確認を!」


「はい!!」


ロビーの奥に居る人物の指示で数名の職員が周辺の被害調査に向う為、協会から外に出て行った


「私も70年近く、生きて来たがこんな状態は初めてだ・・・・なぁ鳥居君・・・十文字君・・・」


先ほど進の一撃に待ったをかけた声の主は真っ白い髪と同じく真っ白な髭、そして少し腰が曲がった老人だった


「お久しぶりです・・師匠・・」「ご無沙汰してます、犬飼総局長・・」


そう膝をつき頭を下げる鳥居 傑と十文字 南斗が額から脂汗を垂らしていた


「うむ・・二人とも久しいな・・無事息災で何より・・・特に十文字君・・君はさっきの一撃まともに食らったら肉片も残らなかったよ」


ガタガタと震える十文字をしり目に傑に向き直ると、さらに冷たい目で傑を睨む


「鳥居君・・君は協会所属のハンターでは無い、その振舞には我々公的機関の承認が必要だ・・わかってるよね?」


「は・・はい勿論です・・総局長・・」


傑も十文字同様に神妙な顔で俯いてる


犬飼 源蔵(げんぞう) 齢73の老人だがその腰の曲がった風貌あからは想像できない程の威圧感を放つ、既に現役を引退して30年以上経ったが現役時代は黒衣の聖騎士として黒狼と呼ばれ畏怖の対象だった、35年前に起きた富士防衛戦で大勢のハンターの犠牲の元、龍神オロチを封印して生き残った数少ない生きる伝説だ、現役を引退後は後進の指導に力を注ぎ今現在活躍してる有名なハンターの中には沢山、源蔵の弟子が居る勿論、傑も十文字も源蔵の弟子である


「ところで・・・・あれは何だ?お前らはあの男が何者か知っているのか?」


傑と十文字はそれぞれ顔を見合わせるが、お互いが首を振るそこに真理恵がやってくる


「総局長、ご無沙汰してます・・・この度はご足労頂いて・・」


「おおおお、真理恵ぇぇぇ無事かぁ!!」


深々と頭を下げる真理恵の元に歩み寄ると、さっきまでの迫力は消え失せて、目がこれでもかと垂れさがる源蔵は両手を広げて笑顔で呼びかける、その後ろから支部長が咳払いをしながら源蔵に耳打ちする


「総局長・・・ここは協会支部です・・お孫様とは言えいち職員にその様な・・」


その支部長の言葉に殺気が蘇る


「はぁ?わしの真理恵をこんな危険な目に遭わせておいて、貴様・・死にたいか?」


「!?ひっ・・大変申し訳・・「総局長!!支部長の仰る通りです、私は公私混同する様な人は嫌いです!」


「き、嫌い・・・そ、そんな真理恵ぇぇぇ」


黒狼と呼ばれ恐れられた伝説は孫ばかお爺ちゃんでもあった