第一部☆火星のミリー・グリーン
第六章☆金星行きの貨物船
火星の空港から上空の軌道エレベータまで輸送機がひっきりなしに出ていた。
ミリー・グリーンたちはそれに乗って軌道エレベータの下部まで行くと、電気位置エネルギーで動く箱体に乗り込み一気に軌道エレベータの上部へ移動した。
宇宙港の窓から火星を包む巨大なドームを眺める事ができた。
「本当に火星を出るの?」
「今さら聞かないで」
ミリーは微笑んだ。
メイは初めて会った時の気迫をミリーから微塵も感じなかった。この物腰の柔らかい少女をしげしげと見つめた。
「雰囲気で全く別人みたいね」
「あなたもね、メイ」
殺気のないメイはごく普通の少女だった。
「私は命を救ってもらったお礼をしなきゃならないわ」とメイは言った。
「ならば、そのイヤリングを片時もはずさないでいて」ミリーは自分のとセットのイヤリングを指差して言った。
火星からの独立を望む金星人と接触するのがミリーの目的だった。
しかし単身で渦中に飛び込む真似は冒したくなかった。
計画では金星人のメイが革命家たちの元へ行き、イヤリングの擬似テレパシーによってミリーが同席したと同じ効果を狙っていた。
「メイ。あなたの見聞きすることがそのまま私の見聞きすることになります」
「はい」
二人は金星行きの貨物船に乗った。
追っ手は間に合わなかった。
こうして無事にミリー・グリーンは金星へ向かうことになった。
第一部☆完