リルと視察を交代したあと、リチャード殿下の部屋で昼食ように出店で買った、まんまるジャガイモをテーブルに座り食べていた。
この、まんまるジャガイモの見た目がたこ焼き。
外はカリカリで中はホクホク。真ん中には甘辛に味付けされたお肉が入っている。
(味はまったく違うけど……見た目はたこ焼きね)
そのまんまるジャガイモを食べる私に、リチャード殿下は感想を聞いてくる。
「どう? まんまるジャガイモ美味しい?」
「はい、美味しいです。でも、さっきから私ばかり食べていますけど、リチャード様は食べないのですか?」
いつもだと一緒に食べるのに、今のリチャード殿下はテーブルの反対側に座り、まんまるジャガイモに手をつけず見ているだけ。
「え、食べてるよ。ミタリア嬢、もっと食べて」
(なんだかおかしい? 前に、リチャード様はジャガイモが苦手だとおっしゃっていたわ)
「もしかして、リチャード様は私が美味しいとジャガイモを薦めたから、苦手だけど食べてくれたのですか?」
そう聞くと。
ブンブン、リチャード殿下は首を振る。
「違うミタリア嬢、ジャガイモは苦手だったが、今は好物だ」
「ではなぜ?」
殿下は、一呼吸おいて話してくれた。
「このまんまるジャガイモは……俺がミタリア嬢に食べてもらおうと思って、城の料理長と一緒に考えた料理なんだ」
「え、リチャード様が考えた料理なのですか?」
驚きの告白。
「ミタリア嬢は、ジャガイモ好きだろ?」
「ええ、好きです。リチャード様、それならそうだと早く言ってください、ゆっくり味わって食べたのに……」
「ごめん。ミタリア嬢の、素直な感想を聞きたかったんだ」
謝るリチャード殿下に首を振り。
「まんまるジャガイモ、とても美味しいです。リチャード様も一緒に食べましょう?」
と、まんまるジャガイモ一つ取り、彼の前に差し出すと、照れならパクッと食べてくれた。
「……ん、やっぱり美味いな」
と、笑ったリチャード殿下は可愛かった。
♱♱♱
収穫祭が終わると、寒い冬の時期がやってくる。
私達が住むローランド国では雪が降り、いつもの馬車で王城には行けない。だけど、リチャード殿下は時間を作り、屋敷まで雪馬を走らせ会いにきて来てくれ、冬の間も時間がある限り一緒に過ごした。
私のお腹のアザは、以前よりも模様の様なものが浮かび、そのことを王妃様に手紙で伝えた。返ってきた手紙に「リチャードと順調のようね」と書いてあり、王妃様のお子様もスクスクと育っており、春先には生まれるとも書いてあった。
(……何事もなくてよかった)
時期は12月――リチャード様が時間をつくり、会いに来てくれている。私はナターシャが持ってきてくれた、紅茶とクッキーをテーブルに準備していた。
「リチャード様、お茶がはいりました」
「ありがとう、いただくよ。ミタリア嬢、この冬が過ぎて、春が来たら学園が始まるな」
「はい、学園楽しみです」
クローゼットの横にかかる、サラーロン学園の制服に目をやる。制服はブレザー紺色のジャケット、学年でリボンとネクタイの色が変わり、チェック柄 の赤いプリーツスカートだ。
そして、ヒロインの登場する。
彼女と出会い、私達の関係はどう変わるのだろうか。
乙女ゲームの通りに私は嫉妬で悪役令嬢となり、リチャード殿下はヒロインに攻略されるのかな。
少し怖いけど、学園は楽しみでもあった。