「【血液強化】……うん、身体の中が熱くなってきた」
白蛇戦のように私の中の何かが燃え上がるような感覚を感じながら。
試しに軽く『熊手』を振ってみると、かなりの速度が出て風を切るような音が聞こえてくる。
宿の部屋の中のため、走ったり跳ねたりは出来ないものの……筋力等色々なステータスが強化されているのか効果が発揮されているのが分かりやすい。
聴覚や嗅覚なんかも強化されているからか、余計な周囲の音や匂いを拾ってしまっているものの、索敵にも使えるかもしれない。
そんなこんなで大体10分後。
身体の中の熱量が冷めていき、それと共に身体全体が重くなったような感覚が襲ってくる。
【貧血】が付与されたのだろう、視界の隅に【00:14:59】という数字が見え徐々に減っているのが見えた。
「おぉ、意外とステータス低下凄いなぁ。身体が少し重い程度かと思ってたら割と動くの辛いレベルとは。確かめるのは大事ね」
デメリットを軽減、回復することが出来る造血剤の作り方や街の店なんかで探してみた方がいいかもしれない。
咄嗟に戦闘中使えるのかは分からないが、用意をしておいた方がいいだろう。
「よーし。続いてー【創魔】」
デメリットが残ったままではあるものの、これから行うのは別段身体を動かすわけではないためそのまま魔術を発動させる。
瞬間、目の前に【白紙の魔導書】が出現する。
それと共に、もう一冊見た事のない赤黒い表紙の本が出現した。
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Tips:体系追加
魔術創造、NPCから教わるなどしていると【創魔】に体系追加が発生します
それに伴い、その体系の魔術を創りやすい新しい魔導書が出現します
・【白紙の魔導書】はオールラウンダー
・体系追加によって出現した魔導書はその体系のエキスパート
という認識で使用するのが良いでしょう
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Tips:魔術体系
魔術にはそれぞれ体系と呼ばれる、一定の種別が存在します
それぞれの魔術体系には【攻撃】、【補助】という種別に関わらず、似通った特徴を持ち合わせており、それぞれ名称の前に【○○術】という体系名が付けられています
※性能が特化しているわけではなく、似通った特徴を持っているだけの魔術のため、これを使った方が強い、というわけではありません
※体系追加が発生する前に創造した魔術も魔術体系自体は存在していますが、複数の同系統魔術を創らない限り名前に体系名が出現することはありません
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「……なる、ほど?」
やはりというか出現した2枚のウィンドウを読み、首を傾げる。
パッと表示されたため良く分かっていないが……まぁまぁある程度理解は出来たと思う。
つまり、私は今まで魔術の事を一括りに『魔術』と言っていたものの。
所謂、死霊術などと言われる種別が存在している……らしい。
そして突然目の前に出現した赤黒い魔導書はその種別に対応しているものらしく……私で言うならば先程名付けた【血術】を創るのに補正が掛かる、という認識でいいだろう。
「うん、あとでしっかり内容確認するとして……ちょっと創ってみよう」
【【血術の魔導書】が選択されました。魔術創造を開始します】
赤黒い魔導書……【血術の魔導書】の方を手に取ると、【白紙の魔導書】は光となって消えていった。
次いで、使う素材を選ぶ段階になったのだが……表示されたのはインベントリ内の2種のみ。
『精霊狐の血液』と『霧鮫の血液』という血液関係のアイテムだけだった。
「じゃあ……うん、ラストエリクサー現象と同じことになりそうだし、『精霊狐の血液』にしよう」
その中でも、『白霧の森狐』から貰ったアイテムを選択して魔術創造を進めていく。
思い出の品と言えばそうなのだが、私は別に『白霧の狐面』を持っているため別段そこまで思い入れもないのが確かだからだ。
『起動方法』は【発声行使】。
『種別』は【攻撃行使】に設定する。そろそろ切った蹴った以外の攻撃方法も欲しいなぁとは思っていたからだ。
そして最後の『効果』なのだが……【白紙の魔導書】で創造した時に選択出来た『効果』とはまた別に3つほどアイコンが出現していた。
ご丁寧に赤黒く染まっているその3つのアイコンは、『
どうせならその中から選ぼうと考え……迷った末に、私は『生み出す』をタッチした。
いつも通りの確認にYESを押し、魔術を創造する。
【魔術を創造しました】
【名称を決めてください】
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【血術『名称未設定』】
種別:血術・攻撃・特殊
等級:初級
行使:発声
効果:HPを20%消費し、血液で出来た四足歩行の魔導生成物を出現させる
出現させる魔導生成物の見た目はイメージによって変化可能
『魔導生成物』
HP:(消費したHP量×5)
攻撃能力:爪撃、噛みつき
能力:物理的な攻撃によるダメージを70%軽減する
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「……わぉ。ゴーレムみたいなものかな」
取り敢えず、ということで名称を【
使った素材も素材だし、恐らく私が出現させるのならば狐の方が色々と使いやすそうだという思いもあったためだ。
流石に宿の部屋で確かめるのはまずいと思い、私は【平原】へと向かった。