「……ま、考えても仕方ないか。最悪煙草にでもしちゃえば問題ないし」
現状、まだ『人斬者』の方が片付いていないのだ。
流石にそれが片付くまでは、怨念系の装備を増やすわけにはいかない。
……もしかしたら、気が付いてないだけで今着てる装備も怨念系の可能性だって……ないわけじゃないしなぁ。
一応、今回装備を受け取った時に一通りはしっかり観たものの。
私が気が付いていないだけで、怨念を帯びていたり、装備側が勝手にそういうものを隠蔽している可能性だってある。
そんな知能が備わっていそうな事を装備側がするのか、と思う所もあるにはあるが……紫煙が不可思議な力を持っている世界観なのだ。そんな事があってもおかしくはないだろう。
「あ、そういえば装備の詳細見てないや。……ボス前には流石に見とかないと」
言って、貰ったスクショを自身の周囲に表示させながら壊滅した集落を歩いていく。
たまに生き残りが居たのか、こちらへと向かって叫びつつ突っ込んでくるアマゾネスのような敵性モブがいるものの。
酒気と【疑似腕】だけで対応できる為、私がそちらに意識をしっかりと向ける事はほぼ無い。
まるでフィクションにおけるヴィランがやっていそうな状況になっているものの……そもそもが煙草と酒を延々と摂取し続けている女だ。どこに行ってもヴィラン側で通じてしまうだろう。不本意だが。
……うわ、結構変わったなぁ。流石に『黒血の守狐』よりは上位ではあったかぁ。
装備の各詳細を見てみれば、マイナーチェンジ版だった黒血狐シリーズよりも大幅に強化されているものが多い。
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『死水魔女のボディス』
作者:メウラ
耐久:100/100
種別:防具・上
品質:B+
効果:
怨念に対する
薬剤系アイテム使用時ボーナス
『死水魔女』シリーズ複数装備時、数に応じてステータス強化スキルにボーナス(中)
説明:怨念を込められた鉄が練り込まれた布を用いて造られたボディス
何処か薬臭く、光の当たり具合によっては極彩色に見える
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これが『死水魔女』シリーズのボディスであり、グローブもコレと同様のシリーズになっている。
元が薬をオーバードーズする事で近接戦闘型に変化したボスだからなのか、ステータス強化スキル……私で言うならば、【過集中】や【背水の陣】などにボーナスが入るようになったのは正直有難い。
……紫煙駆動の方にも適用されるんだったら……中々壊れる可能性はあるよねぇ。
まだ杯形態での紫煙駆動は試していない為に、この後……『酒呑者』との戦闘中にどうなるかは見れるだろう。
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『隠矢小娘のドレススカート』
作者:メウラ
耐久:100/100
種別:防具・下
品質:B+
効果:
怨念に対する
遠距離武器装備時、与ダメージ
『隠矢小娘』シリーズ複数装備時、数に応じて遠距離攻撃ダメージにボーナス(中)
説明:赤く染色された布を用いて造られたドレススカート
何処か機械的でありながら、少女らしさを兼ね備えた不可思議なもの
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次にドレススカートとロングブーツは『隠矢小娘』シリーズ。
セット効果も強く、単純に効果自体も私に合っている為に『死水魔女』シリーズがステータス強化スキルボーナスを持ってこなかったら全身このシリーズになっていた事だろう。
最近はあまり使う事もないが、隠蔽率もそれなりに上昇している為に【隠蔽工作】によるステルスアクションも行いやすくなっているのが痒い所に手が届いていて素晴らしい。
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『死骨王者の外套』
作者:メウラ
耐久:100/100
種別:防具・装飾
品質:B+
効果:
怨念に対する
周囲の怨念の量によって
『死骨王者』シリーズ複数装備時、数に応じて
機構:ST
貯蔵されたSTを消費する事で、指定された形状へと紫煙を変化させ固定する
現在登録されている形状:フード
説明:赤く染色された布を用いて造られた外套
何処か土の香りと共に、スミレのような香りもする
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最後に、『死骨王者』シリーズの外套。
変換機構が付けられている為に、他と少し違った様相をしているものの……一番目を惹くのはそのセット効果だろう。
……復活効果は強い、んだけどねぇ。
死亡時復活というこれまでになかった効果であり、その有用さは態々言わなくても分かり切っている。
しかしながら、その確率が問題なのだ。
メウラと共に、全身を『死骨王者』シリーズにした上で適当な相手に倒される事約500回。
その内、復活効果を発揮したのは、たった2回程。
パーセントに直すと凡そ0.4%になってしまったのだから、私もメウラも頭を抱えた。
その為、万が一の保険をコレに任せる事はせずに、グレートヒェンの素材を使う事で得られる効果を外套に乗せてしまおうという話になったのだ。
「怨念で防御力が上がってくれるのは今後を考えても良い事だしねぇー」
スケルトン系のボスだったからだろう。
怨念に関する能力を持ってきてくれたのは大変助かるし、有難い。
装備によって補助されている部分もあるのだろう。先程から雑に行っている集落内の残党討伐も楽に済んでいるし、たまに目立つ色であるのにも関わらず敵性モブが私をスルーして走り去っていく事もある。
装備は偉大、という事なのだろう。
メウラには後でしっかりと感謝しておかなければならない。