Episode22 - BR


--マイスペース


次の日。


「よし、確認作業していこうか」


流石に戦闘後に休憩したとは言え、精神的に摩耗していたのは間違い無い為、一度ログアウトを挟んでのボスリザルトだ。

と言っても、『信奉者』由来の討伐報酬は割と少ない。


「えぇっと、肉、骨、それと……布切れと金属片か」


それぞれ枕詞に『信奉者の』と付く素材が少なくとも2個、多くて5個程手に入っている。

使うとすれば、煙草用に骨、布切れと金属片は装備に。

肉は……申し訳ないが、私には人肉食の趣味はない為、死蔵か興味のある人に譲るくらいにはなるだろう。

そして、


「こっちがMVP報酬……って言っても、ソロで挑んでるから私以外なる事はなかったんだけど」


MVP報酬としてインベントリ内に追加されていたのは、1つの指輪。

キャラクリ時にガンマから渡された指輪に酷似しているものの、こちらは赤黒い錆が所々に付着している。


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『信奉者の指輪』

耐久:100/100

種別:指輪

品質:EX

効果:ST貯蔵0/1000

説明:『信奉者』が着けていた金属製の指輪

   魔の力に親和性が高い

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「いや、強いな」


効果としては、STの外付けタンクのようなもの。

初めは紫煙駆動以外で使わないと思っていたSTも、今では魔煙術や生産でも消費するようになり、煙草の消費ペースも中々に早い。

そんな中、STを貯蔵しておける装備というのは中々に強力だ。

……MVPだけしか貰えないってんなら色々言われそうだけど。

気になって掲示板で調べてみると、ボスの素材……今回で言うならば『信奉者の金属片』を使い、指輪を鋳造する事でほぼ似たような装備が作れるらしい。

と言っても、生産品の指輪の方は、現状の生産スキルの性能的にもMVP装備の下位互換に過ぎないようだが。


「これは火点け用の指輪の横に嵌めておいて、と。次はぁー……スキルを見るか」


修得スキル一覧を開き、今回のボス戦で増えた2つのスキルを確認する。


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【回避】

種別:戦闘

熟練度:17/100

効果:回避行動にボーナス(小)

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【過集中】

種別:汎用

熟練度:1/100

制限:一定以上の集中レベル時のみ発動

効果:全ステータス上昇

   軽度の『視野狭窄』状態付与

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「おっと知らない名前が……何々?そのままの意味で『視野が狭くなる』デバフか……へぇ」


【回避】は名前そのままの効果を持ったスキル。

恐らく日頃の戦闘でも無理矢理避けたりしていたのがボス戦で花開いたのだろう。

そして【過集中】の方はと言えば……既に修得している【背水の陣】に近いようで近くないスキルだ。

あちらは名前の通りHPの減少をトリガーに発動する、言わば火事場の馬鹿力のようなもの。

そしてこちらはと言えば……スポーツ選手などが試合中になるというゾーンに近いものなのではないだろうか。


……一定以上の集中レベル、ってのは聞いた事ないけど……戦闘とかしてれば勝手に発動する、って事だよね。

ステータスアップ効果が勝手に付与されるのは良い事だ。その分相手を倒しやすくなるのだから。

だが、それと共に付与されるデバフが良くない。

視野が狭まるという事は、その分奇襲などに弱くなってしまうという事なのだから。


「うーん、これはちょっと本当に索敵系のスキルを取った方が良いかもしれないなぁ」


昇華煙によって付与される索敵能力でも事足りるだろうが、常日頃からそれがあるわけではない。

HPバーを目印に、視界内の索敵用として使っている【観察】も、視野が狭まってしまったらその効力も落ちるだろう。

最低でも別口の索敵系スキル、もしくは無理矢理にでも視野を広げるようなスキルが在れば変わるのだろうが。


「ま、考えても仕方ないか。あと確認しないといけないのはぁー……ダンジョンの方か」


残る確認すべき内容は、【世界屈折空間】に起こった変化だろう。

【峡谷の追跡者】の新たな難度に関しては、別段興味はない。……というか、多分今現在の私が行った所で、道中の敵性モブが強くて死ぬだけなんじゃないだろうか。

もし運良くボスまでいけたとしても、アレより強化された『信奉者』相手に上手く立ち回れるとは思えない。


「ま、どの道挑むとしても他の3つのダンジョンを攻略してからかな」


まだまだ他にもダンジョンはあるのだ。

1つだけに集中するのではなく、満遍なく攻略していった方が色々楽しめるはずだ。



--【世界屈折空間】


「……おぉう。これはまた一気に変わったな」


エデンの中央区とほぼ同じ様相をしていた【世界屈折空間】。

今もそれには変わりない。しかしながら、


「これまた巨大な門が追加されたもんだ」


見覚えのない巨大な門が1つ、【世界屈折空間】の中心に出現していた。

真っ白なその門には、4つの宝石が嵌められており……その内の1つが青く輝いている。

……流石に長い事ゲームやってるんだから、これだけで察するよ。


恐らく、というか。ほぼ間違いなく。

新たに出現したこの真っ白な門は、ここに存在する4つのダンジョン全てを1度でも、どの難度でも良いから攻略すれば開くのだろう。

今回、私が攻略したのは青の門の【峡谷の追跡者】。丁度、光っている宝石と同じ色の門のダンジョンだ。


「次の段階に進むにはって感じか。分かりやすくて良いじゃんね」


ゲーム内における、プレイヤーの大目標のようなものだろう。

ダンジョンの奥へ進み続ける。最奥へと向かう為に開く必要があるモノ。

それの第一歩がコレ、という事だ。


「じゃ当面の目標は、この門を開けるって事で――」


新たな力を手に入れ、新たに目指すべき目標も定まった。

……あとは、私自身のサブの目標も見つけたい所だね。

何か熱中出来そうなものはあるだろうか。

今触っただけでも、このゲームには様々なコンテンツが存在している。まだ見ぬものも沢山あるだろう。


「――奥に進んで、探していきますかぁ」



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プレイヤー:レラ

・紫煙外装

『外装一式 - 器型一種』


・所有スキル

【煙草製作】、【投擲】、【観察】、【フィルター加工】、【背水の陣】、【斧の心得】、【回避】、【過集中】


・装備

ウルフジャケット、ウルフショートパンツ、ウルフグローブ、イニティブーツ、『信奉者の指輪』

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