-そして、数時間後。俺と『真っ当』な方達は事務所前に集まっていた。
『………』
「…やるな。正直数人でもいれば良いと思ったがまさか全員呼んで来るとは…」
男は、彼らの放つ怒りのオーラを平然と流し俺を称賛した。…弱みを握っているからか、それとも『場馴れ』か?
「…いや、正直俺もビックリしてる。だが、これだけ居れば『一人七人』で『接待』が出来るから、『そんなに時間』は掛からないだろう」
後ろに並んだ14人のボディーガード達を見て、俺は『笑う』。
『……っ』
「…おや~?『約束を破る』ぞ~?」
彼らの取った『リアクション』を見て、すかさず『気を引き締め』させた。
『……っ』
すると、彼らは直ぐに怒りのオーラを放ち始めた。…危ない危ない。
「…ククク、よっぽど『凄いネタ』みたいだな?」
既に周囲が薄暗くなっていたのもあって、男は彼らの一瞬の変化には気付かずゲスい笑いを浮かべた。
「…それじゃあ、期待して待ってるぞ」
「ああ」
男はそう言って、自分の持ち場である『重役』の屋敷に向かった
「さ、それじゃ行きますか?」
『ああ…』
そして、俺は彼らと共に事務所に入り地下の物置に向かう。
「-…じゃあ、外をお願いします」
「「了解-」」
『…っ』
物置のドアの両脇に立つ二人に『警戒』を頼むと、彼らは敬礼して外に向かった。…それを見て『真っ当』チームは唖然としながら二人を見送った。
「…まさか、あの二人も『味方』なの?」
すると、同じエリアを守っている鋭い目付きの女性の護衛が最初とはまるで別人のように、普通に聞いて来た。
「ええ。…彼らも『初日に入れ替わった』人達ですね」
「……」
「…それで、『それをサポート』したアンタは一体何者なんだ?」
「…それに、なんでアンタが『あの人達』と知り合いなんだ?」
聞いて来た彼女はまたもやぽかんとした。すると、双子の兄弟ボディーガードがそれぞれ質問してきた。
「…まず、お兄さんの質問ですがその答えは簡単です。
ー私は帝国政府直属の特務捜査官。プラトー三世です」
『…嘘っ!?』
彼らは俺の名前を聞いて驚愕する。
「…そして、弟さんの質問ですがそれは此処に潜入する前に『仲良く』なったからですよ。
-そうですよね?」
俺はそう言って、近くの資材ボックスの上に乗る『オウム型ドローン』に向かって話し掛けた。…すると、エアウィンドウが展開し『通信』が始まった。
『-ああ。その通りだ』
『…あ、久しぶりですね』
そこには、セサアシス警備隊の実働部隊である二つの班の班長が揃い踏みしていた。
『…中尉殿っ!』
『ウェンディ-お姉様-っ!』
直後、男性達は一斉に敬礼し女性達は黄色い声を出した。
-そもそも、彼らを『真っ当』だと判断出来た理由は『これ』だ。要するに、彼らは警備隊でキチンと講習と訓練を受けた『セミプロ』なのだ。
いやー、彼らを派遣した『民間警備会社』が『銀河連盟が推奨する教育カリキュラム』を取り入れた優良企業で良かった~。
『諸君。彼は、君達が今まで見て来た有象無象とは一線を画す本物だ』
『…ええ。何より彼は、貴女達が一番嫌いな奴らとは違って-誰-であっても敬意と礼節を払ってくれる素敵な帝国紳士です』
『……』
…いやー、恥ずかしいな。
二人の最大の称賛に、14人のボディーガード達は尊敬の眼差しを俺に向けた。
『…という訳で、是非とも協力してあげてくれ』
『私からも、お願いします』
二人は律儀に頭を下げてボディーガード達に頼んだ。
『サー、イエッサーっ!』
『お任せ下さい、お姉様っ!』
すると、男性陣は再度敬礼し女性陣は胸を叩いた。…慕われてるな~。
『…それでは、吉報を期待している』
『頑張って下さい』
二人はエールを送り、そして通信は切れた。
「-…さて、俺は『約束』を守りました。今度は皆さんが約束を守る番です」
「…勿論だ」
「…是非、協力させて下さい」
すると、男性陣からは渋い見た目の人が。女性陣からは一見柔和に見えるが全く隙のない女性が代表で出て来た。
「…お願いします。さて、それでは-」
「「-っ!?」」
俺は物置のドアを開ける。すると、そこにはロープでぐるぐる巻きにされた『変装コバンザメ』の二人がぎょっとしながらこちらを見た。
「-まずば、『味方の奪還』から始めましょう」
『……っ』
「…流石だな」
「…まさか、『助けを求めた同僚が行方不明』になっている事もご存知だとは……」
「簡単な話しですよ。
本来このリゾートエリアは、皆さんを派遣した『大手』の『テリトリー』です。なのに、『現地の無名企業』が大半を締めているんですよ?…そして、『セミプロ』である皆さんの同僚が遅れを取るとしたら答えは一つだ。
-乗った船の中に敵の仲間が潜んでいて、瞬時に無力化され何処かに拘束されている。…そう考えるのが普通です」
再び彼らはビックリしたので、俺はなんでもないように言った。
「…いやいやいやいや、普通はそんな考え出ないと思うんだけど?」
「…同感」
すると、同じ班の二人が突っ込みをいれて来た。…うーん、どうしよう?ま、別に『言っても』-。
「-…もしかして、先程の方々のような『協力者』が本土に居たりします?」
ちょっと悩んだ話しが進みそうもないので、『とっておき』の秘密を話そうとした矢先に女性陣のリーダーが聞いてきた。
「…正解です。いやはや、流石ですね」
「…なるほど。コイツらと同じように、本土にも味方が居るって事か…。
-んで、今から『アタシ達の味方がどの拠点にいるか喋らせよう』って訳だね?」
「「…っ!?」」
同じ班の女性は、ニヤリとしながら二人を見た。当然、二人の表情は青ざめた。
「…しかし、我々には『そういうスキル』を持つ者はいないぞ?」
「ご心配なく。…皆さんには、『これ』を使って貰います」
俺は、事前に物置に転送しておいた『スーツケース』を取り適当な高さの物資ケースの上に置き、それを開いた。
「…羽?」
そこには、『羽の形を模したオモチャ』が人数分入っていた。
「…貴方、なかなか『凄い事』を考えるのね……」
「…恐ろしい奴だな」
それを見たリーダーの二人は、冷や汗を流しながら若干引いた。…驚いたのはこっちもなんですけどね。
「…まさか、これを使うのか?」
「…まあ、『嫌な記憶にならないなら』何でも良いけど…」
一方、他のボディーガードは『ピュア』な意見を口にした。なので、ちょっと『考えを改めさせる』。
「…まあ、見ていて下さい-」
俺はその一つを取り右の男に近付く。そして、予め靴を脱がして置いたのでそこに羽の先端を当てた。
「-っ!?」
直後、男はその場で跳ねた。そして、俺は乱雑にそれを動かす。それと同時に、『口』を解除した。
「あひゃっ!あひゃひゃっ!やめ…あひゃひゃっ!」
「さあ、質問だ。彼女達の仲間は何処にいる?」
俺は右手を一旦止め男に聞く。
「…はあっ、はあっ、はあっ…。
ハッ、何の事…っ!あひゃひゃひゃっ!」
案の定男はしらを切るので、俺は右手を動かす。すると、男は悶え苦しんだ。
「…嘘は良くないなー。お前が『水賊』の一味だって事は『とっくに調べ』がついているんだ-」
『-了解ですカシラ。…ふう。おい、行くぞ』
『はい、アニキっ!』
俺はツールからドローンに指示を出した。すると、『証拠映像』が流れた。
「-あひゃひゃ……はあっ、はあっ、はあっ……。…っ!」
映像の中の、『自分と相棒』を見て男は固まった。まさか、『盗み見』されていたとは微塵も思わなかったのだろう。
「…さあ、それじゃあそろそろ『本番』と行こうか?」
「「…っ!」」
気付けば、後ろにいた彼らはその手に『オモチャ』を持ち鋭い目をしていた。
「…じゃあ、『我慢比べ』の始まりだ」
俺は満面の笑みで宣言し、物置を出たのだった-。