「とはいえ、ボク達も計画に関わっている身なんだから、情報は欲しいよね。連絡先を手に入れたのはファインプレーだった訳だ」
「……あっ、でもねでもね。それ以外にも、すのこさんが気に入ったっていうのもあるよ」
ぱぁっとルトの表情が一転して明るくなる。その変化にロントの眉がピクリと動いたが、その事にルトは気付かなかった。
「……わたしがバトルロイヤルの大会で優勝した事を知っている人は多いけど、配信動画まで見てくれた人は少なくて、その中でもあそこまで内容を語れる人はもっと少なくて。『ああ、この人はちゃんと見ていてくれたんだ』って思っちゃったもん」
「…………」
「……チャット欄の速度を知っているのは動画を直接見てくれた人だけだもんね。もちろん、切り抜きとか見てくれる人もありがたいけど、わたしの動画に来てくれるのはカクベツだよ」
「――――」
「……わたしと話している間もニッコニコでさ。わたしの事が好きなんだってのが伝わってきて、恥ずかしいけどもう嬉し――」
「――ちゅ」
「……へ?」
突然、ロントがルトに軽くキスをした。唇と唇、されど花弁が触れるような淡い接吻だ。それでもルトには衝撃が強過ぎた様子で、キスをされたと理解された瞬間に顔を真っ赤にした。
「……えっ。あ、あの……ちょっとっ、ロント!?」
「……御免。ちょっと嫉妬した」
「……えええええっ!?」
顔を背けて頬を朱に染めるロント。彼女の様子にルトは脳天から湯気が吹き出るかと思う程に興奮した。
「さっきの連絡先おいそれ云々も建前だった。本当はアンタと彼女が仲良くするのに嫉妬した。……御免」
「……ええっ、ふぇええっ!?」
更なる告白にルトは目が回る思いをした。何とか正気を保つとロントに背を向けて扉へと向かった。
「……バカ! もう
「うん。……また明日」
「っ……また明日っ!」
トマトのような顔色のまま、それでも律儀に別れの挨拶を口にするルト。出る際に扉を閉めた勢いは強く、音が室内に響いた。
ルトが去った扉をロントは数秒見ていたが、ややあってベッドに仰向けに倒れた。顔を右手で覆うが、朱色は耳にまで染まっている。片手では到底、顔の熱を隠す事は出来なかった。
「あー……凄い恥ずかしい事をした」
後悔先に立たず。火照りはしばらく収まりそうになかった。
◇
同時刻。現実世界にて。
自宅で就寝していたすのこはガバッと勢い良く起き上がると、夜闇に向かってこう叫んだ。
「何か今、すっごいてぇてぇ事が起きた気がする!」