「ふん、どいつもこいつも往生際が悪いね。……そのつもりならこいつにはバラバラに挑んじゃ駄目だ。四人一斉に掛からないと」
槍を構え直した少女が言う。
「四本の腕を同時に使わせるって事ですか?」
「そうだ。まずは四本腕のコンボを途切れさせないと、こいつに隙を作れない。……行けるかい?」
「言うまでもねえ」
マイが剣を構える。私も両手に矢を握って構えた。ゾンビが向かってこないように間合いを図りつつ四人それぞれがゾンビの四方に立つ。
「……じゃあ。行くよ。――【
ルトちゃんの指先から超圧縮された水弾が発射される。ゾンビがそれを上右腕で防ぐと同時に私達も動いた。
ゾンビの左手側から私が飛び掛かる。ゾンビが上左腕で振るって私を弾こうとするが、その腕を私は両拳で挟み撃ちにした。六本の矢がゾンビの手首を砕く。ほぼ同時、少女の槍がゾンビの右脇を狙った。ゾンビが柄を掴んで槍を止める。マイの逆袈裟が放たれたのはその直後だった。ゾンビが下左前腕で刃を受け止める。
「…………っ!」
ゾンビの四本腕全てを防御に使わせた。だが、ここからだ。ここまではまだ第一段階。ここから強烈な一撃を喰らわせなければこの敵は倒せない。
「――【
少女の槍から魔力が迸ったのはその時だった。
穂先の延長線上になるように放たれた魔力がゾンビの脇腹を貫いた。ゾンビからすれば掴んで止めていた筈の槍が突然伸びたようなものだ。さぞかし驚愕した事だろう。死体故に表情は変わらないが、大きく姿勢を崩す。
「そこ!」
着地した私がゾンビの左膝裏を殴る。幾ら死体とはいっても関節は関節だ。折り曲げられる耐性は他の部位より低い。左足を曲げられてゾンビの姿勢が更に危うくなる。それをどうにかしようとしてゾンビは思わずマイの剣から手を放してしまった。
「【
直後、その隙を見逃さずマイが斬撃を放った。至近距離で放たれた魔力の刃がゾンビの下顎を打つ。ゾンビが仰向けに倒れそうになるが、寸での所で右足を後ろに出して自身を支え、転倒を防ぐ。
「【
そこにすかさず風刃が飛び、ゾンビの右肩を裂いた。ルトちゃんが放った風魔術だ。四度のクリーンヒットによりついにゾンビの両脚が浮いた。そのまま重力に従ってゾンビの体が倒れる。一斉攻撃のチャンスだ。
と思いきや、
「オォォ、アアアアァァァ――ッ!」
突如、ゾンビが咆哮した。