西暦二〇XX年――つまり今と同じ時代。
邪神が降臨した。
邪神とは何か。その辺りを詳しく説明すると長くなるので割愛するが、要は大昔に地球を支配していた化け物だ。人外種族や人類の異端者達に崇められていた神の如きもの。その横暴さ故に封印された邪悪なるもの。それが並行世界の二十一世紀に解き放たれたのだ。
永き封印にも拘らず邪神への信仰は途絶えていなかった。彼ら邪教徒達を率いて邪神は人類社会を急襲、再征服を開始した。人類は当初、劣勢を強いられた。邪教徒達は魔術という科学では解明出来ない技術を持っていた為だ。
だけど、人類は勝利を諦めていなかった。敵は自分達の知らない技術を駆使してくるのであれば、それを学べば良いと。敵は自分達の持っていない武器を奪えば良いと。そうして人類も魔術を習得し、邪教徒達と対等になった。
しかし時すでに遅し、その頃には各国政府は崩落していた。この極東も例外ではなく、都道府県という区分も残らなかった。
そんな
「かつての文明の名残や、この一〇〇〇年の間に作られた遺物を採集。それらを使って道具や施設を作っていって、人が住める領域を拡大していく――っていうのがこのゲームの趣旨だよ」
「ふーん。特に倒すべき敵とかいねえのか?」
「設定上、いる事にはいる。一〇〇〇年前に邪神を召喚した邪教徒がまだ活動しているって設定だから。まだ全容ははっきりしていないけど、その教団幹部や邪神がボスキャラになる筈だよ」
「そいつらをぶちのめすのを目的に遊ぶのもアリって事か」
「勿論アリだね。マイはそっちの方が好き?」
聞くとマイはにかっと笑って肯定した。
「おう。敵味方がはっきりしていて、ブッ倒せばOKってのは分かり易くて好きだ」
「マイらしいなあ」
竹を割ったような性格だ。単純だと思うが、すっきりしていて気持ちが良い。
とはいえ、残念ながら彼女の望む展開はもっと先の話になるだろう。何故なら今はあくまでもテストプレイの段階。ストーリーはまだ用意されていないのだ。現段階で実装されているのは朱無王国周辺の地域までという事情もある。
「ちなみに、朱無王国って日本のどの辺だ?」
「埼玉県らしいよ。だから山はあるけど海はない」
まあ海はネタの宝庫だ。逃す理由もないし。本格リリースされた時には海のエリアも実装される事だろう。海辺ならではのイベント、VTuber達の水着・新衣装、キャッキャウフフな絡み……楽しみだ。
「という訳で、今日はストーリーに沿ってダンジョンに行って何か採集をしようと思うんだけど。それと、今日は生配信しようと思うんだけど、そっちも良い?」
「ああ、どっちも良いぜ。どこまでも付き合ってやんよ」
「ん、ありがと」
マイの快諾に笑顔を返す。
教典を取り出して操作。カメラの機能をオンにする。
「