「ああ、そうそう。この会話は本体にまで伝わっているからね。
「いえ! いえいえ、そんなとてもとても……!」
何も出来ませんとも! ええ本当何も!
「えー。本当に何もしないのぉ? ザ・ン・ネ・ン」
「えっ……? ええっ!?」
「あはは。嘘、嘘。冗談だよ」
「うひぃ、小悪魔ムーブ……! あっあっ、ででででもサインとか頂ければ……その、有難いのですが……!」
「サイン? うーん。残念だけど紙とペンがないから無理かなー。あったとしても、ここから先に何かを持ち込む事は出来ないし」
それはそうだ。ここがキャラ作成の場面だという事を忘れていた。うう、本当に残念だ。
「あっ……じゃ、じゃあその、握手だけでも……!」
「うん、それならいいよぉ」
おっかなびっくり差し出した私の手をマナちゃんは躊躇なく握り返してくれた。
ひえぇ……あ、温かいよぅ……! ちゃんと人肌を感じる。このゲームではここまで五感が再現されているのか。
「さて、それじゃあ、早速IDを教えてくれるかな?」
「あっはい……XXXXXです」
応募当選の際に与えられたIDを口にする。すると、
「IDの確認をしました。VTuberの二倉すのこちゃんだね。改めてようこそ!」
「――――!?」
お、おおおおお、推しが! 私の推しが! 今、私の名前を口にした……!?
「そりゃあ当選者の名前くらいは全員、
「ひっ、ひいぃ……! 恐縮です!」
あまりの畏れ多さに全身が引き
推しの可憐な声と愛らしい唇で私の名前を呼んでくれた。これだけでこのゲームを始めた甲斐があった。もう死んでも良いかもしれない。ぐひひ。
「それならビジュアルはもう作ってあるのと同じで良いね」
マナちゃんがパチンと拍手をする。途端、私の体が光に包まれて、次の瞬間には巫女装束を纏っていた。白い小袖に緋色の袴、勾玉のネックレス。脇や肩が丸出しの、いつも私のVTuber姿だ。
「じゃあ次、
「あ、あ、あの……『
このゲームは開始前に
その中でも戦士は三種に分かれ、
……本来ならば、だけど。別に弓兵が接近戦したり魔法を使ったりしてはいけないというルールはない。単にそういった事は不向きなだけだ。
「はーい、『